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心の眼(194)

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長野県東御市

■バイトとネット社会
人権同和教育指導委員 岡澤 健一(おかざわ けんいち)

私が、バイトという言葉からすぐ思い浮かべるのはアルバイトという言葉です。このアルバイトという言葉からは、学費のために、生活費のためにという、どちらかというとプラス的なイメージが浮かんできます。しかし、最近大きな問題となっている「闇バイト」という言葉からは、マイナス的なイメージしか浮かんできません。バイトは本来本業があり、副業としての仕事という意味ですが、逮捕される人達からは、副業というイメージにつながりません。
現代社会は、ネット社会の急速な発展により、他者とのコミュニケーションの在り方が大きく変化しています。つまり私たちは、オンラインとリアルな場の二つのコミュニケーションの世界を行き来する社会に生きなければなりません。そこでは、物理的な距離と心理的な距離が一致しないことが増え、マナーやルールができあがらないままに、匿名による発信が行われています。それは自由な表現を活発化させる一方で、心ない発言や誹謗中傷、犯罪への窓口が飛び交う状況を作り出してしまっています。
この闇バイトという犯罪も、見も知らぬ他人とつながることが簡単にできるネット社会の中で生まれてきた犯罪の一つといえます。特殊詐欺も最近はネットを巧妙に利用し、年齢の低い層までもが犯罪に遭う世界に広がってきています。
常にスマホを持ち歩く現在は、いつでも、どこでも個人情報が他人でも利用できることを可能にしてしまいました。つまり、手のひらに収まってしまう小さな世界は、世界に開かれた情報が行き交う大きな窓になっているということです。事実、この闇バイトの実行役になった者からは、個人情報を安易に教えたために、指示役から脅迫され、犯罪をせざるを得なかったと証言する者も少なくありません。
スマホをいつも身近に置いて手放せない生活は、常に交感神経が高ぶり、心を休めることができない生活をつくりだし、常に「不安」という気持ちを無意識に持ち続けることになります。
この闇バイトに加担した者は、こうしたネットから生まれてくる不安感が、「仕事がない」「お金がない」「脅迫される」などという現実の不安と結びついて、罪の重い犯罪に手を染めてしまったのではないかと考えます。

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