文字サイズ
自治体の皆さまへ

出会いは突然に! オツネントンボ再発見 !!

20/23

長野県栄村

■希少動植物調査員からの報告(43)

その出会いは、突然にやってきました!5月10日、前日までの寒気が過ぎ去って、爽やかな快晴となりました。気温も上がりそうです。ここ数日の降雨と低温で動きを止めていたチョウやトンボなども一斉に活動を始めそうです。大いに期待して調査に出かけた私たちです。
さかえ倶楽部スキー場の駐車場下にはいくつかの溜池?があります。その一つの池の水際まで下りてみましたが、水面や岸辺にはトンボの姿は見えませんでした。まだ時間が早くて気温が上がっていないせいかな、と少しがっかりしながら、すぐ隣にあるもう一つの池を覗きました。その池は、夏には深いススキなどに覆われて、なかなか近づけない池ですが、草の少ない今の時期は、すぐ水辺まで行けるのです。
その池の水辺まで下りて、しばらくすると、広瀬調査員が、「あっ!」と声を上げました。何事かと、私も広瀬調査員が指さす方を見ましたが、水面に突き出たアシの枯れ枝しか見えません。
しかし、再度広瀬調査員に促されてその枯れたアシの先をよく見ると、何やらイトトンボのようなものが止まっていることが分かりました。望遠レンズで拡大して、我々二人、改めて驚きの声を上げました。

◆30年ぶりの再発見?
なんとアシの枯れ枝の先に止まっていたトンボは、私たちが2020年の調査開始以来探していたオツネントンボだったのです。
このトンボは、村内では平成10年に発行された「栄村の自然西部・東部編」に記録はありますが、これまでなかなか見つけられずにいたトンボです。おそらく約30年ぶりの再確認であると思われます。
体の色が成熟しても枯れ葉色のため、じっとしていれば全く気付かないで通り過ぎていたに違いありません。今回は、たまたま飛び立ったため、その存在が分かったのでした。探し求めていたトンボが、こんな身近な場所に生息していたのです。

◆越冬トンボ3種、すべて村内で確認!
現在日本に生息するトンボ類約200種のうち、成虫で越冬するものは、わずか3種類だけです。オツネントンボもその一種です。「オツネン」とは「越年」を意味します。
これまでの調査で、その3種のうち、ホソミオツネントンボとホソミイトトンボについては、すでに村内での生息を確認し、この欄などで報告させていただきました。
今回のオツネントンボの再発見により、日本で成虫越冬する3種すべてが、現在この栄村で生息していることが確認されました。栄村の自然の豊かさを物語る事例です。

◆ホソミイトトンボも多数確認!
さらにこの日は、ほかにも新たな発見がありました。同じく成虫越冬するホソミイトトンボが、この日調査した複数の池のうち、新たに3つの池で初めて確認されたのです。
このイトトンボについては、今年度4月号でもお伝えしたように、もともと西日本が分布の中心でした。しかし、近年の温暖化の影響か、長野県を始め、近隣の地域で北進・東進が著しいトンボです。村内では、2022年に初めて発見されました。
このトンボは、越冬して春に成熟する春型と、夏に現れる夏型の2タイプがあることが知られています。今回確認した複数のホソミイトトンボは、時期からしても春型ですので、明らかに村内に定着し越冬した個体と思われます。私たちが思っている以上に、栄村も温暖化の影響を受けているのかもしれません。
トンボは、「地域の水辺環境の豊かさを示すバロメーター」とも言われます。これから、本格的なトンボの季節を迎えます。トンボを通して、さらに村内の自然環境の変化も見えてくるに違いありません。

(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU