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淡水産動物の4分の1 絶滅の危機 栄村は ?!

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長野県栄村

■希少動植物調査員からの報告(51)

1月初め、ネットのニュースに気になる見出しを見つけました。なんと「淡水産動物の4分の1絶滅の危機」というのです。
その記事を読むと、「魚や昆虫、甲殻類を含む淡水産動物の4分の1が汚染やダム、農業などの脅威により絶滅の危機に瀕している。」というのです。記事のもととなった研究は、国際的な総合科学学術雑誌「ネイチャー」に発表されたものです。
淡水産動物には、魚はもとよりエビやカニ、貝、カエルやイモリなどのほかに、ゲンゴロウやヤゴ(トンボの幼虫)などの水生昆虫も含まれます。

◆栄村の現状は?!
前述の研究は、世界各地の現状を調べて総合的に判断したものですが、栄村ではどうでしょうか?
これまで村内の淡水産動物について調査できたのはごく一部ですが、ゲンゴロウ類を例に分かったことをご紹介します。
「ゲンゴロウ」は、誰でも一度は耳にしたことがある甲虫です。この昆虫は、幼虫・成虫とも水中や水辺に暮らしているのですが、実はたくさんの仲間がいます。
村内では、過去に記録のある9種も含めると、これまで19種のゲンゴロウ類を確認しました。本年度の調査では、今泉のそばの池で体長1cmほどのサワダマメゲンゴロウと思われる種を新たに確認しました。村内初記録のようです。
ゲンゴロウ類の生息地は、田んぼや溜池、湿地などのほかに、河川や渓流に棲む種もいます。大きさもナミゲンゴロウのように成虫で体長4cmもある大きなものから、わずか2mmほどのチビゲンゴロウまで様々。
村内の田んぼの中を覗くと、小さなツブゲンゴロウや絶滅危惧種のクロゲンゴロウなどが、せわしなく動き回っている様子がよく見られます。昨年夏に調査を行った苗場山頂の池塘にも、マメゲンゴロウという小型種が生息していてびっくりしました。
こうした水生昆虫は、村内の身近な場所にも数多く生息しているにもかかわらず、ふだんはほとんど注目されません。しかし、ゲンゴロウの仲間の中には、生息地の環境悪化等によって、現在全国的に絶滅が危惧される種が多くいます。
村内には、これまで発見されていないゲンゴロウがまだまだいるはずです。しかし、現在も20種ものゲンゴロウ類がまだ棲んでいる多様な環境があることは、とても貴重なことなのです。

◆淡水産動物の棲む環境を大切に
村内では、これまでの調査で2種のエビが現在でも生息していることを確認しました。ヌマエビとヌカエビです。千曲川沿いの小河川やその近くの池沼にはヌマエビが、また、内陸部の池沼ではヌカエビを確認しました。
そのほかにも、希少なシナイモツゴをはじめとする魚類、トンボのヤゴやカエル、コオイムシやタイコウチ、ホウネンエビやマルタニシ、カワニナやゲンジボタル、さらにはトビゲラやカゲロウなど多くの淡水産動物が棲んでいます。そして、それらの生き物は、村のかけがえのない豊かな生態系を作っています。
先のニュースによれば、淡水産動物の多様性は、数十億人の生活を支え、気候変動に対する防壁にもなっているといいます。しかし、池沼や湿地帯の損失は、森林の3倍のペースで進んでいます。
水辺に舞うホタルの光、せせらぎに聞こえるカジカガエルの声など、様々な淡水産動物は、私たちの生活空間の中で安らぎや潤いを与えてくれるものでもあります。こうした環境を大切に次の世代に引き継いでいきたいものです。

(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)
引用:国際ニュース:AFPBB News

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