■傷つける言葉と元気をくれる言葉の中で
飯山市人権同和男女共同参画地域推進員会 会長 髙澤 寛
「人生はあなたが思うほど悪くない…」という言葉を、どこかで聞いたことはありませんか。この頃テレビコマーシャルでよく耳にするので、ご存知の方も多いと思います。これは私の大好きな言葉です。こういった心を元気にする言葉は、グッドフレーズといわれているようです。
最近、私は正岡子規が死の直前に、留学中の夏目漱石に宛てた手紙を目にしました。
それは「僕はとても君に再会することは出来ぬ…。実は僕は生きているのが苦しいのだ」というものでした。ショックでした。何だか私のグッドフレーズが薄っぺらに思えたのです。
子規は結核という身体の病気でしたが、私たちの周りには心を傷つけられて苦しんでいる人が数多くいます。差別的な言葉がSNSで拡散したり、ハラスメントを受けたりしているのです。この苦悩をふりまいているものは、特定又は不特定の人間です。相手が人間であるということが、この種の苦悩の解決を一層難しくしています。その心ない一言に傷つき悩み、命を絶つ人さえいるのです。
心が傷ついたら一人で抱え込まずに、先ずはその痛みを訴えることです。父母でも、友人でも、行政でも、誰でもかまいません。そしてもうひとつ、その苦しさに潰されないように、自分で自分を励ますことも大切です。身のまわりの言葉の中から、自分を支えてくれるものを探すのも、そのひとつです。
どうして私はグッドフレーズを薄っぺらだと思ったのでしょう。生きることがつらい人の苦しみを、一気に取り去る言葉などあるはずがないというのに…。苦しさに喘いでいる心にちょっと息をさせてあげる、それがグッドフレーズの力です。ふっと緊張がほどける、それで十分だったのです。それにしても、どうして私たちの社会はこれほど疲弊してしまったのでしょうか。
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