ジューッという音と共に、立ちのぼる煙と肉の焼ける香ばしいかおり。行事の打ち上げや作業の慰労会、お花見、家族や仲間との食事など、この地域で人が集まるシーンに欠かせないのが「焼肉」です。「日本一の焼肉の街」として知られる飯田市を中心に、南信州では焼肉店の多さもさることながら、実は精肉店の数も全国トップクラス。精肉店が肉、野菜、お皿や箸などとセットで鉄板やガスボンベを貸し出す「出前焼肉」も地域独自の文化として根付いています。
焼肉は、大勢で食べることでさらにおいしさを増すコミュニケーションツール。日常が戻りつつある今、鉄板を囲んで地域の食文化を大いに楽しみましょう!今回は11月29日のいい肉の日にちなんで町内の精肉店を特集。これまでの歩みや肉へのこだわりなど話を聞きました。
■出前焼肉とは?
精肉店が肉や野菜、紙皿、箸、鉄板、ガスボンベをセットにして貸し出すサービスのこと。今回話を聞いた「肉の丸久」「肉のウチムラ」もこのサービスを行っています。予算や希望に合わせて肉や野菜、タレなどバランスよく用意してもらえることや、準備や片付けの手間も軽減されることから、慰労会や子ども会などさまざまな席で喜ばれています。
■肉の丸久
上沼(かみぬま)昇(のぼる)さん(73)
昭和25年、高森町下市田生まれ。高校卒業後、名古屋での修行を経て20歳から「肉の丸久」で働く。おいしい羊肉を求めてオーストラリアへ渡るなど、ルートの開拓や新しい試みにも積極的に取り組む。飯伊食肉組合長のほか、県の食肉事業協同組合連合会の理事を務めたことも。「飯田下伊那には舌の肥えたお客さんが多いですから、味にごまかしは効かない。『食べて本当においしいお肉』を提供し、お客さんに喜んでもらいたいです」
■肉のウチムラ
内村(うちむら)宏行(ひろゆき)さん(53)
昭和45年、飯田市松尾生まれ。高校を卒業後、茨城の食肉専門学校で学び、横浜での修行を経て22歳で「肉のウチムラ」へ入店。二代目とは親戚にあたり、35歳の時に店を受け継ぎ三代目店主となる。「仕事をしていてうれしいのは良いお肉を触ったとき。『お客さんにおいしいって言ってもらえるだろうな』と、その先の笑顔が見えてうれしくなりますね。動物にも命があり、それをいただくのだから、おいしく食べられるよう大切に使うことを心がけています」
<この記事についてアンケートにご協力ください。>