■肉の丸久
昭和28年に創業し、70周年を迎えた肉の丸久。令和2年に出砂原商店街から国道153号線沿いへ店舗を移転し、より品揃えも豊かに生まれ変わりました。ショーケースには信州プレミアム牛肉(R)や、くりん豚(R)をはじめ、ラム、マトンロース、内臓肉など多数の商品が並びます。「商品の良さはもちろん、店の雰囲気や接客も大切にしてお客さんが来やすい店を目指しています」と話してくれたのは社長の上沼昇さん。
父が立ち上げた精肉店を継ぐことを決意したのは高校生のとき。卒業後は名古屋へ修行に出ました。しかし、その行き先はなんと”八百屋“。
「親父曰く『商売の基本は八百屋だ』と。なぜなら八百屋は、その日仕入れた商品をその日のうちに売り切らなければならない仕事だから。そのノウハウを学んでこいと言われました」
2年間修行に励み、20歳で帰郷。当時はまだ店が暇だったこともあり、住宅街をバイクで回って注文を集める「御用聞き」を自らのアイディアで始めました。
「飛び込みで行ったもんだから、最初は『どこの小僧よ』という扱いだったけど、徐々に注文をもらえるようになってね。そういう才能には長けていたのかも」と上沼さんは笑顔で振り返ります。
当時、店では羊や豚を枝肉で仕入れ、さばいて提供していました。そのおいしさとリーズナブルな価格が次第に評判を呼び、出砂原商店街にキラヤがオープンしたことも追い風となって、お客さんが次々と来店するように。店が力をつける中、30歳と歳の時には良質な羊肉を求めて自らオーストラリアに出向くなど新たなルートの開拓にも取り組みました。
「マトンやラムのロース、マトンレッグなど地元の人が好む部分肉だけを売ってもらえるよう問屋を通して交渉して。味がいいからお客さんにも喜ばれましたね」
平成7年には「飯田食鮮市場」にも出店。娘夫婦(岩本幸司さん、利恵さん)が名古屋から帰郷し、共に働き始めたことも良い転機になりました。
「小売店だけでは商品の売り方が限られてしまうけれど、食鮮市場と並行することで、仕入れや売り方の幅も広がりました。副社長(岩本さん)が頑張ってくれたし、その力が大きかったと思う。店が新しくなってからは、出砂原の店舗ではあまり扱っていなかった内臓肉などの品揃えも増え、若いお客さんにも喜んでもらえるようになりました」
さらに、人気の一端を担うのが妻・幸子さんの発案により始めた手作りのお惣菜やお弁当です。味付けの良さもあり、ランチタイムや夕方にはこれを目当てに多くのお客さんが集まります。また、味噌味をベースに丁寧に煮込んだ馬の「おたぐり」も昔から変わらず人気の逸品です。
「新しい店は従業員に任せていますが、今後も体が動くうちはできる限り店に立ちたいですね。働くことは好きだし、来てくれるお客さんや、これまで築き上げてきた人とのつながりは財産だから。そういう付き合いも含めて若い衆に継承して、これからも気持ちよくお客さんに足を運んでもらえる店であり続けたいです」
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