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〔特集〕無限の可能性に挑む!チョウザメ養殖「CavLuck」(1)

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長野県高森町


高森町のキャッチフレーズである「なりたい『あなた』に会えるまち」。町では、新たな夢の実現を目指す人たちを積極的に応援しています。
今回取り上げるのは、天竜川の地下水を活用してチョウザメの養殖に挑む株式会社CavLuckです。高森町商工会青年部が「地域に新しい産業を創出したい」と熱意を持って話し合いを進めてきた中で、令和3年から有志がチョウザメの飼育をスタート。チョウザメから取れるキャビア(卵)や魚肉を地域の名物にし、世界にも進出したいという志を持って前進しています。町と町商工会によるアントレプレナー支援制度を使い、町や南信州の新たな魅力づくりに情熱を燃やす社長の吉澤充(よしざわみつる)さんに事業にかける思いや展望などを聞きました。

■チョウザメとは?
約3億年前から存在したといわれる古代魚の一種。その卵である「キャビア」は言わずと知れた高級食材で、世界三大珍味のひとつとして愛されています。日本にも天然のチョウザメが生息していましたが、昭和初期に激減し絶滅状態に。現在、宮崎県をはじめ日本各地で養殖によるチョウザメの飼育が行われており、新鮮で豊かな風味を持つ「国産キャビア」が注目を集めています。
ちなみに、見た目がサメに似ているという理由からこの名が付けられましたが、サメではなく淡水魚。見た目はいかついものの鋭い歯もなく、性格もおっとりしています。

■Interview

―事業を始めたきっかけは?
リニアの開通を見据え、地域で新たな産業を興したいと商工会青年部で話し合ってきました。「出砂原(ださら)商店街を焼肉ストリートに」などの案も出ましたが、店内で火を扱う建物に必要な各種法令や耐震性の関係もあり難しくて。自然を生かして何かできないかと考えた時に知ったのがチョウザメ。まずは稚魚を100匹購入するところから始めました。

―苦労したことは?
最初に購入したチョウザメは100匹全滅。その時はさすがにガックリきましたね。2年目、3年目も飼育し、養殖できるめどが立ったので事業化に向けて動き出しました。

―アントレプレナー支援制度も利用されたとか。
そもそも何のためにチョウザメの飼育に取り組むのか、資金計画や将来的な創業計画まで商工会の堀会長や担当者と協議しながら固めていきました。補助金の申請などもサポートしていただけて本当にありがたかったです。

―その中で上がった課題は?
ブランド価値を高めるためにも稚魚を購入して育てるのではなく、この地で育てたチョウザメから生まれた卵を孵(ふ)化させて、また育ててという循環は必須だなと思いました。

―それは難しいことですか?
民間でチョウザメの孵(ふ)化に成功しているところは、ほぼありません。壬生町長のご協力で島根県の生産者さんの元へ視察に行ったり、大学へ問い合わせたりと、さまざまな方法を模索しました。たどり着いたのが魚類の繁殖研究の第一人者でもある北海道大学の足立伸次(あだちしんじ)名誉教授です。その出会いが転機となり、学術的な根拠の下で進められるようになりました。

―販売ルートは?
キャビアというと僕ら庶民には分からないものなので、シンガポールなど海外の高級志向を持つ方への販路を開拓予定です。ただ、海外へ視察へ行った際に「日本のキャビアは海外では使えない」という興味深い言葉をもらって。

―使えない、とは?
今、日本のキャビアはチョウザメのお腹を裂いて取り出す方法をとっています。でもヨーロッパでは魚を殺さないのが主流。品質以上に背景を大事にしているんですね。そういう意味で日本のキャビアは海外の市場で交渉のスタートラインにも立てないんです。

―新たな課題ですね。
確かに課題ではありますが、海外でできて日本でできないのはなぜだろうと逆に面白さを感じました。魚を殺さず取れるキャビアができれば日本初。足立教授や教授の元で学ぶ大学院生の協力も得ながら進めていきたいと思っています。大変な分、実現すれば大きな付加価値になるはずです。

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