令和6年春にスタートした「南信州SBPクラブ」。SBPとはSocial Business Project(ソーシャルビジネスプロジェクト)の略で、地域の課題をビジネスの手法を用いて解決していこうという取り組みです。
子どもたちが地域資源(ひと、モノ、自然、歴史、名所旧跡、産業など)と関わり、活用しながら「まちづくり」や「ビジネス」を提案。その取り組みを地域が応援し、支えていこうというもので、活動を通じて将来につながる経済感覚を育むことも目指しています。
今年度は、小・中学生、高校生、大学生の有志15人のメンバーで「柿丸くん焼き」の企画開発、販売をメインに活動を続けてきました。ミーティングやイベントでの販売活動、県外の高校生との交流など1年間の活動を終え、そこにはひとまわり大きく成長した子どもたちの姿がありました。
■南信州SBPクラブとは?
SBPは三重県相可高等学校が始めた全国初の高校生レストラン「まごの店」を先進事例に、2013年、同県立南伊勢高等学校で第一号の取り組みがスタートしました。高校生レストランの設立者である岸川政之さんが代表を務める(一社)未来の大人応援プロジェクトが推進し、活動は全国に広がっています。
高森町では「地域人材教育」の一環として(一社)熱中たかもりと高森町が協働で実施。岸川さんの協力を受けながら進めています。活動を通じて、子どもたちが地域の魅力や課題に気づき、まちの魅力アップや課題解決の活動を継続する中で郷土愛の醸成と地域貢献による自己肯定感を育むとともに、将来のまちの担い手の育成も目的としています。また活動の中から地域経済や産業、金融(税制も含む)の仕組みについても学びを深めています。
■本気で取り組み本気でワクワク!まちの魅力をもっと伝えたい
「うまく焼けた!」「こっちの方が市田柿の味が感じられるかも」。1月7日、福祉センターの調理室で行われたのは「柿丸くん焼き」の新商品の試作です。「高森町らしい味を!」と昨年月から、中に入れる餡の開発に挑戦してきました。
市田柿とクリームチーズを合わせるところまでは決まったものの「おいしいけれど、チーズに混ぜると市田柿の味が感じられない」という問題が発生。「ダイスカットにする」「生地に混ぜる」「先に皮を置いてその上に生地を注いで焼く」などの意見が挙がる中で試作を重ね、新たな味わいが誕生しました。
さて、どんな味になったのでしょうか。新商品は2月22日、活動報告会の会場で発表予定です。
◇発見と学びにあふれた初年度の活動
南信州SBPクラブの活動は、5月のキックオフを皮切りにスタート。メンバーは最初の一歩として「Sの絆焼き」に取り組むことになりました。これは愛知県の高浜高等学校が、地域に伝わる鬼瓦の伝統技術と最先端の自動車部品工場の技術を融合して生み出したオリジナルのたい焼き金型で、同校はこの金型を全国販売するSBPを行っています。
「何をモチーフにする?」という話し合いから始まり、町の公式キャラクターである柿丸くんを使うことが決定!そこから「デザインは?」「文字は?」など話し合いを重ねて高浜高等学校に依頼。上がってきた案を見て検討し、発注に至りました。
7月には実際に愛知県を訪れ、高浜高生から焼き方のレクチャーを受けるなど交流。8月は三重県伊勢崎市で「全国高校生SBP交流フェア」に参加し、他地域のSBPの発表を見学しました。メンバーからは「さまざまな取り組みをしている団体があって驚いた」「自分たちも新しいことをしてみたい」などの声が挙がりました。
9月は柿丸くん焼きの準備と練習です。苦労しながら技術を身につけ、9月日、山吹ほたるパーク落成式で初出店。あんことカスタードの2種を販売しました。10月日には高森ふるさと祭りにも出店し、行列ができるほど好評を博しました。
◇南信州SBPクラブのこれから
1年間の活動を終え、メンバーが最も驚いたのは「原価」の計算です。「思ったより高い」「飲食店はどうやりくりしているんだろう」などと話す中で経済的な感覚も自然と育まれたようです。
焼く際も「いかに無駄を減らすか」と試行錯誤する姿が見られるようになりました。こうした工夫は商品開発にも見られ、現在は並行して地元食材を使った商品開発も始めています。
関わる大人はあくまでもサポート役。子どもたちの案が実現できるよう支え、お金の計算法や食品の衛生管理の仕方など随所に学びを入れて成長を後押しします。この活動を担当する(一社)熱中たかもりの坂元亜佑美さんは「子どもたちには地域を知り、興味を持ってほしい。またやりたいことを実現するためには、例えば材料を分けてくれる農家の方など周囲の支えがあることに気づき、その温かさに触れることで、地域が単なる生活の場ではなく『心のよりどころ』のような場所になってほしいと願っています」と話します。
今後も柿丸くん焼きをベースに広報活動など強化し、新たな仲間づくりをしながらビジネスを展開していく予定です。柿丸くん焼きの出店先も大募集。町内外でのイベントなど、ぜひ声をかけてください!
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