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特集~平川市を継承する人たち(3)

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青森県平川市

■郷土芸能 獅子踊
尾崎獅子踊保存会 工藤聖彰(きよあき)さん(33歳・尾崎)

▽敷居が高いと思っていた獅子踊
ねぷた囃子などの地域活動にも積極的に参加している工藤さん。その活動の中で、獅子踊を担う人たちから声を掛けてもらっていたといいます。「入る前、『獅子踊は神聖なもので、敷居が高い』と感じ、数か月ほど返事を保留にしていました。ある日、尾崎獅子踊保存会にお囃子で参加している父親から『獅子踊に興味はないか』と誘われたんです。当時、親子で一緒に獅子踊共演することは珍しかったので、面白いと思いました。父が言うならやってみようと踏ん切りがつき入会しました」と工藤さんは話します。

▽授かった「中獅子」の役割
ねぷた囃子をやっているので囃子方かと予想していた工藤さんに授けられたのは獅子3体のうちの「中獅子」でした。「中獅子は、向かって右側の獅子。性格は勇猛でたくましく、演舞の中では一人踊りのシーンが多いんです。中獅子の歴代の親方(師匠)は小さい頃から獅子をやっていて踊りがずば抜けて上手い人が多いので、自分に務まるのか不安でプレッシャーに押し潰されそうでした」と当時を振り返ります。

▽獅子踊の面白さ
厳しい練習をこなしながら、6年ほど経験を積んだ工藤さん。演舞する際は、かぶりものではなく獅子自体が踊っているように、どっしりと躍動感のある動きを意識しているといいます。「福祉施設などで獅子踊を披露する時は、獅子踊の意味やストーリーを紙芝居などで伝えることもあります。観客の皆さんと最後に記念撮影をしたり、直接触れ合ったりするのも、獅子踊を身近に感じてもらえていると実感します。見ている人に獅子踊のストーリーを聞かれた時、『これは獅子3匹が山に入るために周囲を偵察する場面、次は危険なものはないので実際に山に入る場面で…』などと伝えたところ『どういう場面の踊りなのかがわかって面白い』と喜んでくれました」

▽後世に繋ぎたい郷土芸能
今後の演舞の目標は、「踊り手とお囃子とが一体となって演じられるようになること。そして、伝統の尾崎の踊りを崩さずに後世につなげること」と話す工藤さん。
「獅子踊のストーリーがわかると見方も変わると思うので、もっと多くの人に獅子の面白さを広めたいと思います。尾崎の獅子を踊ることは自分の誇りなので、授かった基本の『尾崎の獅子踊』は崩さずに、情景や心情など自分独自の捉え方をふまえた魅せ方ができ、見ている人たちにも伝わればいいなと思っています」と笑顔で話しました。

■温泉
古遠部(ふるとおべ)温泉代表 長井めぐみさん(63歳・碇ヶ関)

▽うわさの古遠部温泉
宮城県仙台市出身の長井さん。青森好きが高じ、青森市に住んで仕事をしながら、温泉を楽しんでいました。「青森市には13年間住んでいました。令和2年に拠点を仙台に戻すことになったタイミングで古遠部温泉を知ったんです。平川市の碇ヶ関という地域に良い温泉がある、と。実際に行ってみると自然に囲まれた温泉で、とても気持ちよく、秘められたパワーを感じました。もっと早く知っていれば、と思いましたね。その後も県外の友達を連れて来るなど足繫く通うようになりました」

▽感動的な実体験
古遠部温泉の良さを実感した長井さんは、ある日、糖尿病を患った叔母を温泉に連れて行きました。「重度の糖尿病で合併症もあり、歩行器を使い、手も震えるので食事はスプーンで食べるような状態でした。私の妹と一緒に介助しながら温泉に入れて、一泊し、翌日の朝食の時のこと。なんと叔母が普通に箸を持ったんです。そしてその日叔母は歩行器にはほとんど頼らずに帰りました。この光景を目の当たりにし、この温泉のすごさを感じたんです」

▽日常的なやり取り
「宿泊予約をするために電話した時、女将さんに5月でやめることを聞いて驚きました。ただ、女将さんたちとの日常的な会話の中で、冗談交じりに『維持するのが大変だからいつでもやめるよ』とは聞いていて。私も『もしそうなったら何かお手伝いできるかも』と笑いながら話していました」
自分が古遠部温泉に入れなくなるのが一番嫌だったという長井さん。継承者募集のニュースを見て、名乗りを上げたといいます。「温泉ごと、お客さんごと引き継いでほしい」という社長の思いを受け、継承の意思を伝えたといいます。「社長から『是非譲りたい』とその場で許可をいただき、この温泉をしっかり引き継ごうと心に決めました」

▽今後のビジョン
「この地域はお年寄りの方が多いので、デイサービスの送迎サービスを展開し、入りに来てもらうことができるようにしたい。もちろん今元気な若い人たちにも体感してほしい。そして交通がもっと便利になるように、古遠部温泉行の直行バスを作ることも将来的には考えたいです。碇ヶ関地域の活性化にも貢献していきたいと思っています」と長井さんは笑顔で話しました。

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