毎年新春の話題をさらう大間のマグロ。豊洲の初競りに向け、津軽海峡を舞台に漁師が鎬しのぎを削ります。年末に釣り上げられた大物マグロは東京の正月に花を添えます。
実はそれと似たような状況が江戸時代にもありました。しかし、魚はマダラ、舞台は平舘海峡です。
深海を生息域とするマダラは産卵期になると深場を離れます。伝統的なマダラ漁はもっぱらそうした産卵群を対象として行われました。陸奥湾には良好な産卵場があるため、マダラは下北半島と津軽半島に挟まれた平舘海峡を通って湾内に入り、産卵を終えると湾外に去ります。産卵のピークは12月下旬頃なので、漁期は必然的に真冬となります。
マダラは弘前藩においても盛岡藩においても将軍家に献上すべき魚とされていました。他藩に先を越されるわけにはいきません。津軽領、南部領双方の漁師の肩には藩のメンツもかかっていました。一番タラを獲った漁師には藩主から褒美が出された記録も残ります。
タラは漢字で「大口魚」とも書きますが、その大きな口から内臓を抜き、塩を詰めた「新タラ」は、下北の特産品として競って江戸にも出荷されました。正月魚としても人気があり、腹が裂かれていないところが縁起がいいということで、特に武家に喜ばれたようです。
現在もマダラ漁が盛んな脇野沢では、毎年「場取り」が話題となります。マダラは獲れる場所が限られるため、最良の場所に網を仕掛けるための競争が「場取り」です。今シーズンは12月5日に行われました。
マダラが獲れる場所は海底の地形とも関係があり、漁師は漁場を周囲の景観との関係で記憶しているとも聞きます。どのような地形に注目して漁を行っているのか、ジオとの関係にも興味がわきます。
鍋物がおいしい季節です。じゃっぱ汁が楽しみですね。
・今シーズンの「場取り」の様子
・マダラ漁に興味しんしん12月2日に開催された「学習・活動発表会」で地域おこし協力隊の大崎さんがマダラ漁に関するポスター発表を行い、多くの生徒が耳を傾けていました。
※詳しくは広報紙をご覧ください。
◆今月のジオ図鑑
マダラ(タラ目タラ科マダラ属)
▽point
・マダラの骨は縄文時代の遺跡からも出土しています。
・江戸時代のマダラ漁については菅江真澄も記録しています
・不漁の年もありましたが、ここ数年は豊漁が続いています。今シーズンの豊漁も期待されます。
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