◆くすりがない⁉どうなる日本のお薬
こんにちは、大間病院院長 安齋です。
さて、皆さんは「薬不足」と聞いたことはあるでしょうか。国内では2021年頃から様々な影響で内服薬・注射薬の一部が不足し始めました。製薬会社に注文しても「生産が間に合わない、原材料が入ってこない、大きい病院で大量に使用するため小さい病院に回せない」などの理由で一部の薬が入荷できなくなりました。大間病院では咳止め・痰切り薬、抗生物質、血液をサラサラにする注射などの入荷が難しくなり、これまでよく処方していた薬から種類を変更したり、処方を諦めざるを得ない状況が2025年の現在まで続いています。
当初はコロナの影響が強かったため、コロナが収まればそのうちまた安定して供給されるだろうと思われていましたが、ウクライナ戦争・中国で原材料を作る会社のトラブル・マイコプラズマやインフルエンザの例年にない爆発的流行など様々な影響があり、いまだ収束の目途は立っていません。皆さんには、使って欲しいお薬を処方することが出来ず、ご迷惑をおかけして大変申し訳ない限りなのですが、ひとつ、知っておいてほしいことがあります。
今回の薬不足の一因として、「日本の薬は安すぎる」というのがあります。日本において、保険適応の薬の値段は、全て厚生労働省が決めます。そのため、製薬会社や病院・薬局は勝手に値上げすることも、値下げすることも出来ません。厚生労働省は、約10年前から医療費削減のため、ジェネリック医薬品を推進してきましたが、あまりに薬の値段が安く設定され、生産すればするほど、製薬会社が赤字になってしまうため、日本から撤退する製薬会社が出始めてしまいました。
皆さんは、病院を受診した際に「今回の薬代、高いなぁ」と思ったことはあるでしょうか。実は、アメリカやヨーロッパ諸国に比べ、日本の医療費自己負担額は、断トツで安くなっています。例えば、胃腸炎で病院を受診した場合、日本は約2,880円で済むのに対し、アメリカは約32,000円、イギリスは約12,000円かかります。
今後、世界的な物価高の影響や日本国内では、高齢化などもあり、医療費が安くなることはないと言われています。命はお金に代えられないといいますが、お金は命に関わります。大切なお金、大切なお薬をどのように使っていくか、皆さんも今一度考えてみてください。
院長 安齋 遥
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