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歴史の小箱 No.434

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■江戸時代後期の山中宿の賑わい
令和七年のNHK大河ドラマは江戸で書肆(しょし)(出版業)を営む蔦屋重三郎(つたやじゅうさぶろう)を主人公とした物語です。大河ドラマというと戦国時代などの合戦物のイメージが強いのですが、今年は江戸時代の出版業界の物語で、多くの人にとって「蔦屋重三郎って誰?」といったイメージの主人公だと思います。しかし調べてみると、新人の発掘から出版の企画、編集、印刷、販売まで一人で何役もこなしてしまう江戸の大物プロデューサーといった感じで、なかなか魅力的な人物だったようです。
この蔦屋重三郎に見出されて才能を開花させ、売れっ子になった人物に浮世絵師の喜多川歌麿(きたがわうたまろ)、葛飾北斎(かつしかほくさい)、作家の、曲亭馬琴(きょくていばきん)、十辺舎一九(じっぺんしゃいっく)などがいます。十辺舎一九の代表作である『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』は、江戸から京へ向かう二人の主人公、弥次さんと喜多さんの旅を面白おかしく描いた道中記です。三島宿も登場するこの作品は、当時のベストセラーになり、日本初の「旅の大ブーム」を引き起こしたとも言われています。
さて『東海道中膝栗毛』の三島宿の部分では、夜中に弥次さんがスッポンに指をかまれて大騒ぎしている間に財布を盗まれてしまう場面が有名ですが、山中新田の描写も見逃せません。茶屋の客引きの女性が、旅人に関西地方の上等な酒があることを宣伝したり、餅や一膳めしを食べて休憩していくように勧めたりする様子を生き生きと描写しています。当時の山中新田は、東海道の両側に茶屋が軒を連ねた、間の宿(あいのしゅく)と呼ばれる休憩専門の小さな集落でした。こうした茶屋の賑わいは、発掘調査の成果からも垣間見ることができます。
平成元年に実施した、旧東海道沿いに位置する山中公民館の発掘調査では、茶屋の建物跡を見つけることができませんでしたが、土地を区画する段差や井戸、穴蔵(あなぐら)、ごみ穴などが確認され、それらに伴って、大量の陶磁器が出土しました。出土した陶磁器は小型の碗類や土瓶などが中心で、茶屋での飲食に使用した食器類と考えられます。その出土量が江戸時代の後期以降に急激に増加するのは、旅ブームに乗った茶屋の発展を示しています。逆に明治時代半ば以降に激減するのは、鉄道の開通によって歩いて旅をする人が一気に減少して、茶屋が衰退する様を表しています。またイギリス製やオランダ製の陶器の小さな破片も出土していることから、江戸時代末期の山中宿では想像以上に他の地域との活発な交流があったことがうかがえます。

楽寿園内の郷土資料館では、企画展「野口三四郎の芸術世界」を3月1日(土)から開催します。

郷土資料館(楽寿園内)
【電話】971・8228

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