■「感謝状」
この記事を書いている今、パリでは熱い戦いが繰り広げられています。日本も暑い夏となり、平均気温が県内5地点で更新されたようです。熱中症や水難事故も多く、命を救い感謝される報道や、特殊詐欺から救ったとして、感謝状を贈られた金融機関もあります。勇気ある行動に感謝状。素晴らしいことです。
さて、今回は20年ほど前の出来事を紹介します。今のような暑い朝でした。仕事で東海道線を利用した際、私の隣に座っていた男性が突然ガタガタ揺れはじめ、床にずり落ちました。持病か熱中症でしょうか、視線が定まらず失神しています。周囲の乗客も戸惑いを隠せず、中には車両を替える人もいました。私は咄嗟(とっさ)に、頭が床に打ち付けられないように持っていたカバンを頭にあてがい、「どなたかお医者さんはいませんか」と大きな声で呼びかけましたが、反応はありません。体の揺れは収まりましたが、「聞こえますか」の呼びかけに反応はなく、私にはこれ以上の対処ができず困り果て、向かいに座っていた二人の女子高校生に「ねえ、お願いがあるんだけど」と言うと、察したように二人は立ち上がり、電車の進行方向に向かって「どいてくださーい」と駆け抜けました。ようやく次の駅に停車すると、担架をもった駅員が二人立っていました。二人の女子高生は、運転手に事態を伝え、次の駅に連絡を取ってもらっていました。患者は担架で運び出され、ドアが閉まると、私も女子高生も他の乗客も元の席に戻り、落ち着きました。
私は降り際に「本当に助かりました。ありがとう」と言うと、二人は顔を見合わせてにっこりしていたように記憶しています。制服から高校名が分かったので、電話でその高校の教頭先生に一部始終を話し、お礼を伝えました。名前は分からなかったのですが、全校集会の折にでも、そんな出来事があったと紹介されることを願いました。私からの感謝状を贈りたかった、そんな出来事でした。
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