水口(みずぐち)千令(ちはる)さん
紙切り作家
■小さなはさみが生み出す『いのち』
水口さんが小さな手芸ばさみで黒紙を切り抜くと、抱き合う母子、小鳥やパンダ、水田を眺める男の子などのシルエットが次々と生み出されます。それは手のひらに乗るような、小さく優しい『いのち』たち。
子どもの頃は人前で話すのが苦手だったという水口さん。高校生の頃、「絵を描く仕事がしたい」と思い、努力して美術系の大学に進学しました。しかし、現実に絵を生業(なりわい)とすることは難しく、お父さんが営んでいた飲食店のお客さんを楽しませようと、はさみ一つで絵を描いてみたのが、『切り絵』の始まりでした。
また、病院で働いていたときに、順番待ちをする患者さんへ切り絵をプレゼントしたら、とても喜んでくれたのが決め手となり、「これを仕事にしようと思いました」。
水口さんの切り絵の技術は独学で、たくさんの研究と失敗を繰り返して身に付けたもの。紙切り作家として研さんを続けた20年の集大成が、今の水口さんの切り絵です。
「紙切りは、途中で失敗したらやり直しができません。でも、たくさん失敗したからこそ今があるんだなって思います」。水口さんは学校などにも呼ばれ、多くの子どもたちに紙切りの楽しさを伝えています。
先日、山下市長が友好都市の米国マリーナ市を訪問した際に水口さんの切り絵をプレゼントしたところ、その繊細で美しい作品がマリーナの市長や市民に大絶賛されました。
かつて人前で話すのが苦手だった女の子が、人を笑顔にしようと始め、続けてきた切り絵は今、多くの子どもたちに伝えられ、海を渡りました。いつか、水口さんの生み出す『いのち』が、世界中の人々の心に届く日も来るでしょう。
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