■自然な風合いと優しい手触りの新素材 キナリト
○「グッドデザインしずおか」に選定
パルプを主原料とした不織布を製造する王子キノクロス(株)(入山瀬)が開発した「キナリトシリーズ」が、「2023グッドデザインしずおか」で特別賞を受賞。
「グッドデザインしずおか」とは、中小企業などのデザインの戦略的な活用促進を目的に、県内で生み出されたデザインの優れた「モノ」や「コト」を県が選定し顕彰するものです。30回目となった令和5年度は、応募点数55点の中から12点が選ばれました。
○様々な加工が可能
キナリトは、植物由来のセルロース(パルプ)と樹脂からなり、紙と同じ主原料ながら成形や縫製など、様々な加工ができることが特徴です。また、プラスチックの代替品としても活用でき、従来のプラスチック用の設備でも成形が可能。主原料が再生可能な木材パルプで、既存の設備が利用できる点が評価され、「グッドデザインしずおか」受賞につながりました。キナリトを数年かけて開発した王子キノクロス(株)の宮崎さくらさんは「デザイン性だけでなく、ものづくりの部分も評価してもらえたことがうれしかったです」と受賞の喜びを語ります。
キナリトは、熱で成形ができる新素材として、市の開発支援補助金などを活用しながら研究が進められてきました。当時を振り返り、宮崎さんは「王子キノクロスは、これまで他社から依頼があって研究や開発を行ってきました。しかし、キナリトは自社で企画することから始まり、“こんな素材がありますよ”という提案をするものだったので、まず開発の協力企業を探すのにとても苦労しました。自社にはない設備で開発テストをするため、他社に相談しても断られてしまうことがありました。そんな中でも開発に力を貸していただいた皆さんにはとても感謝しています。たくさんの人の手助けのおかげで開発することができたと感じています」と語ります。
キナリトは現在、ギフトボックスやワインラベル、スリッパなど様々な用途に活用されています。
○感情に訴えかけるような製品に
宮崎さんにキナリトの今後について伺うと「まずは手に取って、手触りや質感、デザインを感じてほしいですね。“面白い”、“優しい”など、皆さんの感情に訴えかけるような製品になったり、誰かの困り事を助けるような素材になったりしてくれたらいいなと考えます。また、市内のお店や企業と一緒に、ものづくりでまちを盛り上げていければと思います。こんな素材が富士市で作られていることを、少しでも知ってもらえたらうれしいですね」と笑顔で話してくれました。
人に優しく、環境に配慮した新素材「キナリト」。今後の展開に注目です。
問合せ:王子キノクロス(株)富士工場開発研究所
【電話】0545-72-3721
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