染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:ふるさと納税制度の現状と課題
■ふるさと納税制度のあり方を考える
皆さんは、「ふるさと納税」にどんなイメージをもっておられますか。お得な買い物サイトだと思っておられる方、寄付した額以上の特典(返礼品と税額控除)が受けられるから利用しない手はないと考える方など、受け止め方はさまざまです。地方創生を謳(うた)って2008年にスタートしたふるさと納税は、制度開始から丸15年が経過しました。都市部で暮らす地方出身者が、人口減少等で財政的に苦しい出身地を応援する目的で始まった制度です。その後、ふるさと納税の仕組みは何度も見直しを重ねながら、2021年度には金額ベースで約8,300億円、件数ベースで約4,500万件に達しており、今後も増加すると見込まれています。一方で、ふるさと納税の制度にはさまざまな議論があり、課題が顕在化しているのも事実です。そこで、島田市の現状をお伝えするとともに、ふるさと納税制度のあり方についてご一緒に考えていただければと思い、今月のテーマとします。
■ふるさと制度3つの利点
一般に、ふるさと納税には次の3つの利点があるといわれています。(1)返礼品がもらえる。(自治体側からすれば、返礼品を通じて地域の名産品や産業を全国の人に知ってもらえる)(2)寄付金が控除(還付)される。ふるさと納税では控除上限額内で寄付を行うと、合計寄付額から2,000円を引いた額について、所得税の還付、住民税の控除を受けられます。(3)寄付金の使い道を指定できる。教育・環境・福祉・子育て・災害復旧などさまざまな使い道を選択できます。大規模災害などの折に、被害の大きかった自治体に寄付が集中するのも、ふるさと納税を使って被災地を応援したいという善意の表れと感じます。
■当市の返礼品・納税の現状
では、島田市の現状はどうなっているでしょうか。まず、ふるさと納税返礼品として一番人気なのは、トイレットペーパー、二番手はコーヒーの詰め合わせ、次いでティッシュなどとなっています。残念ながら、島田市特産のお茶やみかんは、返礼品のベスト10に入っていません。
令和4年度にふるさと寄付金として当市にご寄付いただいた額は3億1,181万3,000円、寄付件数は1万9,188件でした。これに対して、寄付額の3割相当の返礼品代、ふるさと納税を募るポータルサイトへの手数料、送料などの経費が1億6,663万1,000円かかっていて、差し引くと、当市にいただいた寄付額の純益は1億4,518万2,000円となります。
これに対して、島田市民が他市町へふるさと納税制度を使って寄付し、島田市から住民税控除を受けた金額が1億4,490万9,000円あります。島田市に寄付していただいた額から、島田市民が他市町に寄付し、島田市の住民税控除を受けた額を差し引くと、純益は、27万3,000円でした。これが、現在のふるさと納税の実態です。全国的にふるさと納税で集めた寄付額ばかりクローズアップされますが、そのまちの市民が他市町に寄付する額が多ければ、市の収支は赤字になってしまいます。横浜市などはふるさと納税により、年間230億円以上の住民税が他市町に流れ、税収減になるという大きな課題を抱えています(総務省データによれば、全国の4分の1の自治体が赤字)。
■返礼品の掘り起こしと地場産品の販路拡大
ふるさと納税は、地場産品の販路拡大という大きな成果を挙げていますが、海産物やブランド牛、産地米、観光地宿泊券など、名の通った返礼品がある市町に寄付金が集中し、通販サイト化しています。ふるさと納税で全国上位にランキングされる市町は固定化し、魅力ある返礼品を揃えられるか否かで寄付額の優劣が決まると言っても過言ではありません。このように返礼品競争が過熱化する中、本年10月には、ふるさと納税に係るすべての経費を5割以下とする基準、地場産品基準の明確化など、適正な運用について総務省から通達がありました。
ふるさと納税で集めたお金で市町に新しい施設ができたり、給食費の無償化に充てたりという話題も耳にしますが、ふるさと納税は恒久的な制度ではありませんので、経常的な歳出に充てるのは慎重にすべきと考えます。その上で、魅力ある返礼品を掘り起こし、地場産品の販路拡大を図り、島田市をもっとPRできるよう、組織を挙げて尽力してまいります。
問合せ:秘書課
【電話】36-7117
<この記事についてアンケートにご協力ください。>