■美的感覚と演奏技術に郷愁(ノスタルジー)を織り交ぜながら、鼓膜と心底を揺さぶる音楽を創る
新東京(ギターレス4人組バンド)
大蔵倫太郎(おおくらりんたろう)さん
田中利幸(たなかとしゆき)さん
新進気鋭のギターレスバンド「新東京(しんとうきょう)」。島田市出身の田中さんと大蔵さんが奏でる楽曲は、「フジロックフェスティバル」をはじめとする国内ライブに留まらず、海外でも多くの聴衆を魅了しています。
■地元が引き合わせた二人
島田地区と金谷地区で、それぞれ生まれ育った2人。出会いは、高校1年生で組んだバンドだったと振り返ります。
「高校は別々なんです。片や3歳からピアノを習い始め、片や中3からベースを独学でスタート。音楽へのアプローチも全く違うけれど、高校に進学すると共通の友達ができて、その縁を起点に地元でバンドを組むことになりました。現在の前身のようなバンドでしたが、高3の頃に一度、しまだ夏まつりで演奏したこともあるんですよ。その後は、別々の大学に進学したのですが、再び縁あって組むことになったバンドが『新東京』です。キーボードとベースに、東京出身のボーカルとドラムを加えた4人組で、それぞれを際(きわ)立たせるため、意図的にギターを省いた編成にしました」
■セルフ・プロデュースの訳
2021年、東京を拠点に結成された新東京。以来、その活躍の場を急速に広げています。
「レコーディングもジャケット写真も、最後までこだわり抜き、一つの作品として世に送り出したい。そんな思いから、バンドを法人化しました。自分たちの作品を他人に託すのではなく、自分たちが『イイな』と思える方向に進むことが、1本芯の通ったブランドを育てると考えたからです。結果的にそれが、僕らを『イイな』と思ってくれる人との接点を増やし、大型フェスや海外ライブに呼ばれる機会に繋つながったのかもしれません」
■色あせない郷土への思い
「楽曲を作る時、物悲しくもホッとする音楽、昭和の歌謡曲などを思い浮かべることが多いんです。それはきっと、ノスタルジーの感覚が創作活動に大きく影響しているからで、その源泉は地元にあるんですよね。島田大祭や金谷茶まつりなどの体験が根っこに。そこにテクニカルな演奏を合わせることで、新東京の色に染まっていく気がします。だから、西日本でライブがある際は、必ず島田市に立ち寄って、ノスタルジーを摂取しています。いまや帰省は、メンバー全員のイベント。東京でも、みんなの公用語が島田弁になってしまいました。すると、過去の思い出だけでなく、家族や友人の温かさ、普段ずっと支えてもらっている環境への感謝の気持ちも湧いてきて…その先に、地元でライブを開いてみたい、地元で若者の音楽をサポートしてみたいという目標がチラつくのは、必然なんでしょうね」
郷土愛を糧に、怒涛(どとう)の勢いでフィールドを広げる田中さんと大蔵さん。バンド名に冠した「新」のごとく、独自の洗練された音楽の流布は続きます。
新東京の活動の詳細はQRから(本紙掲載)。
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