染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:なぜ少子化が進む そのリアルな背景
■子育てに関する市の取り組み
今月は、「2023年出生数過去最低」という厚生労働省の発表を踏まえ、少子化の背景について、ご一緒に考えてみたいと思います。
手前味噌ですが、島田市は、県内有数の子育て支援に手厚いまちとして知られ、30歳代と10歳未満の転入人口は10年連続で増加しています。生まれてくる全ての子どもとその家族に担当保健師をつけ、健診や相談に応じながらお子さんの就学時までサポートしていく「島田市版ネウボラ」。市役所の各窓口に行かなくても、いつでもどこでもスマホやパソコンからアクセス可能で、お子さんの年齢にあった申請や相談ができるオンラインサービス「しまいく+(プラス)」。学校からのお知らせ(お便りや家庭訪問の日程調整など)も保護者のスマホへ自動的に届きます。この他にも、こども医療費の完全無償化や保育料の第二子半額・第三子以降無償、育児サポーター派遣事業や子育てコンシェルジュなど、本市独自の手厚い支援体制で子育て世帯を応援しています。また、結婚したい方々の出会いの場の創出など結婚支援についても、市内の支援団体や県と連携して取り組んでいます。
■少子化が進む現状と課題
しかし、子育て支援や結婚支援に全力を尽くしても、一昨年、当市で生まれた赤ちゃんは544人、昨年は504人でした。2013年に生まれた新生児は776人でしたから、この10年間で35%も出生数が減ったことになります。コロナ禍を経て少子化は一段と顕著になりました。
岸田文雄(きしだふみお)首相は昨年、「若者人口が急激に減る2030年代に入るまでが、少子化トレンドを反転させるラストチャンス」と訴え、約3兆6,000億円の財源をかけた新たな少子化対策「こども未来戦略」を策定。子育て環境を整え、子育てにお金がかからないよう、国も県も市町も懸命に「異次元の少子化対策」を講じていますが、出産可能な年齢層の女性数が減少しているうえ、「将来、子どもはほしくない」という若者が増えていることが大きな課題となっています。
■若者のリアルと社会の変化
インターネット情報提供会社による昨年2月の調査では、18歳から25歳までのいわゆる「Z世代」で未婚で子どももいない人のうち、「将来結婚したくないし子どももほしくない」と考える人が36.1%に達しました。「将来結婚したいが子どもはほしくない」との回答も9.4%あり、合計45.5%が子どもを持たない将来を思い描いていることが判明。この結果に私は、これまで薄々感じていたことが、数字化されて目の前に突き付けられたようなショックを覚えました。
これまで、日本の少子化の主な原因として、未婚化や晩婚化の進展、若者の結婚及び出産に関する意識が変化していること、育児に対する経済的負担が大きいこと、依然として男女別賃金格差が存在していること、育児や家事に対する女性の負担が大きいことなどが挙げられてきました。しかし、Z世代の意識調査では「お金の問題以外で子どもをほしいと思わない理由」について、「育てる自信がないから」(52.3%)、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」(45.9%)、「自由がなくなる(自分の時間を制約されたくない)から」(36%)、などの理由が上位を占めました。
■社会全体で考える子どもへの価値観
現在、国や地方自治体が実施している少子化対策は、「仕事と子育ての両立」や「経済的負担の軽減」など、子どもを産み育てやすい環境を創ることであり、Z世代の「子どもをもつより自分の時間を大切にしたい」という意識と明らかにミスマッチが生じています。今後もこの傾向が続けば、少子化に歯止めはかけられず、社会保障制度や国家財政の維持が厳しさを増し、労働力不足やマーケットの縮小も避けられないでしょう。
私見ですが、Z世代の価値観に大きな影響を与えているのは、現代社会の風潮や私たち大人の生きざまのように思えてなりません。近頃は、子どもを持つことの大変さばかり強調されて、子どもがいる生活の喜びや潤い、そして楽しさが、若い世代に伝わっていない気がします。個々人の選択は尊重されなければなりませんが、日本社会全体で子どものいる生活に価値を見出す潮流が広がることを、期待してやみません。
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