■地区で困る人がいないように自分ができることを
70年以上川根町笹間で写真を撮影
三堂和弘(みどうかずひろ)さん(笹間)
笹間地区で70年以上、節目や風景など、さまざまな写真を撮り続けてきた三堂さん。その根底には「地区で困る人がいないように」との助け合いの思いがありました。
■誰かのためにできること
戦後間もない頃の経験を、今も鮮明に覚えている三堂さん。当時の生活が、利他的な活動きっかけとなりました。
「終戦を迎えたのは、中学1年の時。当時は、食べ物や環境が今と比べると良いとは言えず、病気にかかることが少なくありませんでした。島田の病院に行くまでもかなりの時間を要したものです。そうした経験と、地区に医者が不在だったことから医療に関わりたいと思い、薬屋を開業しました。救急車も来ない時代に『1人でも助けたい』との思いから、車の免許を取って、病人の送迎をしたこともありました。
お茶が盛んになってからは、知り合いと協力して肥料や薬品を地区で広めて、栽培のサポートもしていきました」
■写真に残す地区の思い出
カメラへの興味だけでなく、地区にカメラマンがいなかったことも撮影を始めたきっかけに。写真に残した地区の記録は、かけがえのない記憶になりました。
「カメラにも興味があって、欲しいと思っていました。しかし高価なものだったので、10年間貯金をして、ようやく買うことができました。学校の入学式や卒業式、結婚式や屋根の葺き替えなど、さまざまな地区の写真を仕事の合間をぬって撮ってきました。次第に地区でも、『写真に残してほしい』と言われるようになってうれしかったですね」
■写真がくれた笑顔と喜び
「昔、川根町役場で写真を飾ってくれたことがありました。その写真に写っていたご夫婦が、わざわざ見に来てくれたことはうれしくて、今も記憶に残っています。また、写真を撮ることはもちろん、自分で現像した時に画像が浮かんでくる瞬間も楽しいんですよね。
最近は、笹間の茶工場を改装したギャラリーに、写真を飾ってもらえました。自分だけではできないことなので、ありがたく思っています。オープン初日には、地区の人が大勢訪れて、懐かしみながら『写っている人は誰かな?』などと、みんなで盛り上がってくれました。写真が取り合いになって、破れないかと心配になるほどでした。撮った写真は、全部保管してあります。写真から、それぞれの思い出を思い出してくれると、うれしいですね。撮った写真でみんなが笑ってくれる姿を見ると、写真を続けていて良かったなと感じます」
他者への思いやりがあふれる三堂さん。記録した写真の数々は、多くの人を魅了し、住民の心のアルバムを思い出させています。
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