石や砂から塩などの食品まで、さまざまな物を「つかむ・すくう」用途に特化した独自の形状・機能開発に挑む、香川のものづくり企業を紹介します。
◆ミノツ鉄工株式会社
【住所】三豊市三野町吉津乙2039-1
設立:1968年
従業員数:44人
【電話】0875-72-3205
【HP】http://www.minotsu.com/
■ゼロからの開発に強い少数精鋭のトップランナー
◯開発から輸送・メンテナンスまで 自社一貫で徹底サポート
ミノツ鉄工の主力製品「バケット」は、クレーンに吊り下げて「物をつかむ」「粉状・粒状のものをすくう」用途に使われる鋼鉄製の装置です。川や海の水底にたまった土砂をさらい航路を整備するしゅんせつ工事や、港湾の荷揚げで活躍することが多く、対象物によってバケットの形もさまざま。海水につかったり岩石など重量のあるものを扱ったりと過酷な使用に耐える耐久性と強度に加えて、つかんだものを落とさない・すくったものを漏らさない精度の高さも求められます。
50年以上の歴史を持つ同社は、バケット業界で国内シェア8割、港湾荷役に限れば9割以上を誇り、特許も多数取得しているトップランナー。開発・設計・製造・輸送・メンテナンスまで全て一貫して自社で手掛けていることから、あらゆる面で顧客の要望に柔軟かつ的確に応えられることが強みです。
同社のバケットは全国約1000社の顧客を通じて世界中で使われていますが、近年は海外と直接取引の引き合いもあるそう。年間150台ペースの製造を、5人の営業担当と3人の設計担当を中心に少数精鋭で支えています。「営業はもちろん、自社ドライバーも含めて当社のスタッフ一人一人が技術者的な視点でお客さまの声を聞き、ものづくりに反映します」と語る専務取締役兼工場長の桃田信弘(ももたのぶひろ)さんは、全国を駆け回る営業の1人でもあります。「メンテナンスや修理で長く付き合える関係を育み、30年以上取引が続くお客さまも多い。どのスタッフがどこからお問い合わせを受けてもすぐに対応できるよう、お客さま情報の管理とともに日々の情報共有を大切にしています。お客さまのニーズに応えるきめ細かい対応により、ここまでの高いシェアを獲得できたのだと思います」。
◯顧客の要望に寄り添う オーダーメードの開発力
桃田さんにとって印象深い製品は、フルオーダーメードでつくり上げたのり面(斜面)対応のしゅんせつ用バケットです。「しゅんせつ工事の際に掘り上げた土砂は処理が必要なので、お客さまにとってはできるだけ発生量が少ない掘り方が理想的ですが、既存のバケットはのり面を階段状にしか掘れないため、どうしても土砂がたくさん出てしまいました。そこで考えたのが、掘る角度を5段階で調節し、のり面の設計ラインに沿ってなだらかな傾斜を掘れる新しいバケットです」。図だけではわかりにくいため、桃田さん自身がボール紙で模型をつくって提案。そこから図面を起こし、強度計算に基づく改良を加えて、5カ月ほどで完成させました。「設計や製造の担当者と一丸になって、知恵を絞り、意見を戦わせた良い思い出です」と振り返ります。
同社の敷地内には、完成品から修理を待つものまで、大きなバケットが林立する広場があり、間近で見るバケットの迫力に圧倒されます。案内してくれた桃田さんは「しゅんせつのニーズはなくならないでしょうし、今後は島しょ部の建設工事やスクラップの荷揚げなどのニーズも増えそうです。今まで以上にお客さまの声を丁寧に聞いて、世界シェアも拡大していきたいですね」と展望を語りました。
問い合わせ先:(公財)かがわ産業支援財団取引支援課
【電話】087-868-9904
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