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自治体の皆さまへ

しあわせCOCORO通信

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香川県さぬき市

■支え合い
中学校三年
「ぼっ、ぼ、僕は…」今日もスラスラと話せなかった。小さいときから現在もずっと同じような失敗をしています。思った言葉をすぐに口に出したいのに出せない。このようなこと、みなさんも一度は経験があるのではないでしょうか?ある日のこと、僕は一本の懐かしいビデオを見つけました。そのビデオは待ちに待った保育園の発表会の内容でした。たくさん練習をして、その日が本番です。僕と友達は緊張した様子で必死に「お母さんどこかなぁ」と自分たちの親を探しています。しばらくして、発表会が始まり、他の発表がどんどん終わり、自分たちの番までやってきてしまいました。緊張が増す中、友達と「がんばろうね!」と共に誓い発表が始まりました。友達はたくさん練習をした成果もあり、どんどんセリフを生き生きとしゃべっていました。自分の出番がやっときて、「よし!言うぞ!」とワクワクした気持ちで、一言目を発しようとしたその時です。「あれ、言えない。」自分では演じている人物になりきってセリフを言いたいのにどうしてもスラスラと言えませんでした。このことに混乱し、セリフもあやふやで、しどろもどろになり、観客席からたくさん笑われてしまったという恥ずかしい経験をしたビデオでした。僕は当時のことを思い出してみると、発表会後に発表会の様子をお母さんに話したことを覚えています。その時にお母さんは僕に「それはね、吃音って言うんやで。」と言ってくれました。「吃音?」と当時の僕はそう返事をしたと思います。そして僕は発表会が終わった日から「吃音」にとても敏感になってしまいました。普通の日常会話でも吃音が起こってしまうと「またやってしまった。」と考え、悩み、大勢の人前で話すときはもっと緊張し、言葉が詰まり失敗してしまう。このようなことが毎日のようにあり、とても苦しめられていました。
月日が経ち僕は中学生になりました。「緊張して、言葉が詰まり笑われ失敗する。」という心配はまだあまり変わらず、ずっと残り続けていました。しかし、中学生になっても小学生と何も変わらないままでは嫌だと思い、「あっ、そうだ!吃音を治していこう。」と決意しました。そのために僕はできるだけ人との関わりを多くしようと思い、あいさつ運動がある委員会に入るなどたくさんの工夫やチャレンジをしました。しかし、なかなかそう簡単には治りませんでした。本当にどうしようかと悩んでいたそんなある日、学校に行くと「あれ?いつもと何かが違う。」と感じ、僕は驚きました。みんなが僕がしゃべりにくいことを分かってくれたのか分かりませんが、必死に詰まりながらしゃべっている僕の話を最後まで聞いてくれるようになっていたのです。そこで僕は気が付きました。僕の吃音は無理やり治そうとしなくても、みんなが吃音のことを分かり理解してくれ、僕を支えてくれているんだ。そう感じました。そう思うようになると、今までの自分はとりあえず自分のはなしたいことをただ一方的にはなして、相手のことを考えずに必死にはなしていたのだなと思って申し訳なさでいっぱいになりました。それからというもの僕は相手の顔や目を見て、相手を信じてゆっくりはなすように心がけました。そうすると、自然と力まなくても自分の思いや考えを言葉にして伝えることができるようになったのです。
このような経験を通して僕はこう考えました。毎日、過ごしていく中で、吃音に悩んでいる人、悩んでいない人も緊張する場面で言葉が詰まってしまうことがあるかもしれません。しかし、その時は一度、周りを見てみてください。みんながそろってあなたの話を聞きたがっていますから!
みんなのあたたかい支え合いが緊張や不安をなくして、気持ちが少しでも楽になるのではないかと思います。友情や思いやり、さまざまなみんなの優しい気持ちが重なり、起こるもの、それが「支え合い」に繋がると僕は感じました。そして、吃音以外でも、何か悩んでいる人がいたらその人をみんなであたたかく見守り、助け合える、「支え合い」が、自然とあふれている社会になることを僕は願っています。

▽誰かが生きづらさを感じているのは、それは周りの人間がつくり出しているのかもしれないと気づかされました。お互いを思いやり、誰もが安心してくらせる社会をつくっていきたいものです。

「~市内の小・中学生の作文~
さぬき市のホームページでも紹介しています!」

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