■これからも住み慣れた場所で暮らすために
あなたが車を手放したとき、いつもの暮らしがどのように変わるか想像したことはありますか?
・少し遠出をしたいけれどタクシーを使うのはお財布に厳しい
・病院の送り迎えで頼れる人がいない
・駅もバス停も遠くて荷物を持って移動するのが大変
全て実際に寄せられた不安の声です。市内7コミュニティでは、これらの問題を解決しようと高齢者の暮らしを地域で支える移動支援サービスを実施しています。今回の特集では、安心して暮らせる地域づくりに欠かせない移動支援サービスをご紹介します。
◆全国に広がる「交通空白」
今年7月、地方や観光地での移動手段を充実させるために、国土交通省は「交通空白」解消本部を設置しました。これは公共交通機関などを十分に利用できず、移動手段に悩む地域があることを意味します。なぜ、地方ほど移動手段の確保に苦しむのでしょうか。
◆不安の声は市内も多数
人口減少に加えて、マイカーの普及や都市部への人口集中などの影響で、地方バスの利用者は年々減少しています。その結果、赤字路線が増え、財政状況も悪化。バス会社は運行を維持するため、運行本数の削減や経路などの見直しを余儀なくされています。
一方で、一人暮らしの高齢者や運転に不安を覚える高齢者の免許返納が全国で増加しています。本市でも高齢化は進み、令和4年の調査では、総人口の約3割が65歳以上という結果でした。また、後期高齢者(75歳以上)の8割以上が「外出を控えている」と回答し、その理由の多くが「交通手段がないから」というものでした。こうした交通空白地域で暮らす人たちをどう支援するかが、地方自治体の大きな課題です。
◆移動支援への期待と課題
移動支援の問題に対して、地区コミュニティでは補助制度を利用した移動支援サービスを開始しました。各コミュニティが運営主体となり、運転ボランティアが買い物や通院、バス停までの送迎など、日常生活に必要な移動を支援します。このサービスは令和元年に岡田コミュニティが取り組み、現在は7コミュニティが運営。利用者の見守りや社会的孤立を防ぐなど、包括的な支援としての役割も果たしています。
移動支援サービスが市内の新たな移動手段として注目される中、運転ボランティアの平均年齢は60歳を超え、次世代の運転手不足が将来の課題となっています。各コミュニティでは担い手を確保するため、チラシや口コミで運転手を募集しています。しかし、「長時間の活動は難しい」「人を乗せるのが不安」といった声があったり、そもそもサービスの認知度が低かったりといった問題から、担い手確保に苦慮しています。こうした状況を受け、各コミュニティでは活動時間の半日交代や新任運転手への補助役を起用、移動範囲の再検討など、それぞれができることを模索しています。
地域の将来に必要不可欠な移動支援。
各コミュニティでの受け入れ体制や若手ドライバーの確保が課題です。
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