県内唯一の障害者野球チーム「香川チャレンジャーズ」が今年6月、神戸市で開かれた「第32回全国身体障害者野球大会」で初優勝しました。結成4年目での全国制覇は、大会史上最速の快挙。
困難や障がいの違いを超えて、野球を楽しむ彼らの姿を紹介します。
▽チーム設立のきっかけ
「障がいのある人が一歩を踏み出す場にしたい」そう話すのは、チーム代表の山中達也さん。
山中さんは、事故の後遺症で右半身にまひが残る元プロ野球広島の選手。自分と同じように、夢半ばで野球を諦めてしまった人や、障がいを抱えながら何かに挑戦したいと思っている人を応援するため、3年前に仲間と「香川チャレンジャーズ」を発足させました。現在、27人の選手と、選手の体のケアや練習を手助けするサポートスタッフ11人が、準備や練習に汗を流しています。
▽地域の人に夢や希望を届けたい
所属する選手には様々な障がいがあります。野球を通じて、自分たちの新たな可能性に挑戦するとともに、その姿を見てもらうことで、地域の人たちに夢や希望を届けたいと願っています。
▽全国大会優勝がチームの自信に
全国大会は、地区予選の成績をもとに選抜された16チームのトーナメント戦で行われました。準決勝までの3試合は点差をつけて勝ち抜き、決勝は、福岡県のチームと4対4の引き分けとなる熱戦を繰り広げた末、大会規定のジャンケンで、勝利をつかみました。
「ライバルに勝つため、心をひとつにして戦うことができた。最高のチームで最高のゲームができたのは、多くの人たちのサポートのおかげ」と山中さんは振り返ります。2年前に初出場した全国大会では悔しい思いをした香川チャレンジャーズ。これをバネに、練習を重ねてつかみ取った全国大会優勝は、彼らの大きな自信につながりました。
今後も、チャレンジし成長していく選手たちから目が離せません。
チーム代表 山中 達也さん(全国大会で殊勲賞を獲得)
身体障害者野球は、盗塁やバントの禁止、走ることが困難な打者に代わって「代走」が認められるなど、みんなが楽しめるための独自ルールがあります。写真(1)(2)全国大会で優勝し歓喜するメンバーたち、(3)~(7)全国大会明けの交流試合でもチームプレーで見事勝利
※詳細は本紙P.3をご覧ください。
▽野球を楽しむことをモットーに
選手たちは、年齢や障がいの種類・度合いなどは様々ですが、全員で野球を楽しめるよう、いつも心掛けています。お互いに障がいがあることで、コミュニケーションが取りやすいこともあるんですよ。
チームに入った当初、野球未経験者だった私ですが、支えてくれた人たちのおかげで、技術を磨くことができて自信にもつながっています。これから、もっともっとチームを良くしていけるように頑張りたいですね。
9月1日には、レクザムボールパーク丸亀で、中・四国大会があります。ぜひ、応援よろしくお願いします。
副主将 平川 亘紀(ひらかわこうき)さん
▽チームワークの勝利
3年前に監督に誘われたことがきっかけでチームに入りました。私は元々、野球経験者。体の一部が思うように動かなくなっても、もう一度、野球ができてうれしかったです。
キャプテンとして初めての全国大会は、どうにかチームに貢献したいという思いで、率先して声を出し、チームを盛り上げました。試合に出ていない選手のサポートも大きかったため、まさにチームワークの勝利だと思っています。次は、全国大会連覇を目指したいですね。そして、「香川チャレンジャーズ」の知名度を上げて、いろんな人たちと交流を深めていきたいです。
主将 渡邊 真之介さん(全国大会でMVPを獲得)
▽障がい者でもここまでできる
「障がいのある人も野球を楽しめる場所をつくりたい」という思いで、チームの設立から携わってきました。
2年前に初出場した全国大会では、体調を崩して出場できませんでしたが、みんなでもう一度全国の舞台に立てたことが本当にうれしかったです。2度目の全国大会では、監督としても選手としても背中でチームを引っ張り、勝っても負けても全員が次につながる戦いができればと思い、挑みました。
自分たちの活動を通して、「障がい者でもここまでできる」ということを、地域の人や子どもたちに知ってもらい、共生社会の実現に向けて取り組んでいきたいです。
監督 左達 満(さだちみつる)さん
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