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人権コラム ~大人のふり~

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高知県四万十市

私は長いこと大人のふりをしてきた。もう「ふり」をしなくてもいいのに、まだしている。そのうちに、この「ふり」こそが大人じゃないかと感じ始める。
心は子どものころとたいして変わらないのに分別のない人に大人のふりして怒ったりもする。しかし仏の教えでは分別が無いのが悟りの世界と知る。物事を「分けて」「別に」しない悟りの世界。「善」があるから「悪」がある。「楽」があるから「苦」がある。物事の一面だけ見ていると、ついそのことを忘れてしまう。
しかし仏教界の中にも実は分別がある。仏教のキーワードの一つ、「一切平等」。
それを大前提にしながら救われるのは「いいことをした」人に限ろうとする。それが日本の倫理社会を支えてきたと言えなくもないが、行為に善し悪しをつけ、それを救いの条件にするなら少なくとも「一切平等」ではない。教えの解釈の違いはやがて差別と呼ばれるものとなっていく。本来、分けて隔てない、平等であるべきものが差別を生んでいるのだ。それは釈迦(しゃか)の教えそのものでなく、それを解釈する人間の問題である。
だから私は今からも大人のふりをして無分別な人生を歩もうと思う。

四万十市人権教育・啓発講師 光内真也

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