世界で一番大きな両生類、それがオオサンショウウオAndrias japonicusです。文化庁によって特別天然記念物に指定されている動物で、傷つけたり殺してしまったりすると、法律で罰せられます(誤って釣り針にかかってしまったりした場合には、速やかに針から外して逃がしてやれば、罰せられることはありません)。
オオサンショウウオは日本だけにすんでいます。大きなものでは全長150cmくらいになります。体の表面には小さなブツブツがたくさんあって、健康サンダルのようです。体の色は全身茶色にこげ茶色や黒い模様が不規則にあり、川底では目立ちません。
食べものは、魚、カエル、エビなどですが、水の中に入ったヘビやトカゲなども食べてしまいます。大きな体を水のそこにじっと沈めて、口に近くに獲物がやってくるのを待ちます。十分に近づいたところで、大きな口を「がばっ」と、開いて水ごと獲物を吸い込みます。あごの力は強く、人がかまれると大変なけがをするときがあります。
夏になると、大きなオスたちは川をさかのぼり始めます。急流を登り、堰(せき)を乗り越え、大変な苦労をして川の上流にあるお気に入りの巣穴にもぐりこみます。そこで、あとからやってくるメスを待つのです。メスがやってくるとオスは巣穴の中に迎えて卵を産んでもらいます。卵は一度に300~600個ほどが生まれ、数珠のようにつながっています。メスは卵を産むとすぐに巣穴から出て行ってしまいますが、オスは卵を狙ってやってくる魚やエビをおいはらったり、卵に新鮮な水がかかるように大きな尻尾でさかんにあおいだりして、巣穴の中にこもってつきっきりで世話をします。一カ月半くらいすると、卵から子ども(幼生)がかえり、卵を守っていたオスは、巣穴を出て下流に向かって去っていきます。子どもたちも、生まれた巣穴から少しずつ離れて一人で暮らすようになり、およそ5年で大人になるといわれています。
オオサンショウウオは西日本だけにすんでいますが、とくに岡山県や広島県などの中国地方にはたくさんすんでいる川がいくつもあります。大きな川だけではなく、小さな小川や田んぼの水路で見つかることもあります。四国でも、四万十川、仁淀川、吉野川などの大きな川、そこに流れ込む小さな支流で見つかるときがあります。仁淀川の中流域である越知町では、他の地域より確認される機会が多いように私は感じています。
高知市にあるわんぱーくこうちアニマルランドでは、高知県内のオオサンショウウオの調査を進めています。県内のどこかでオオサンショウウオが保護された場合、連絡を受けて現地に赴き、全長の計測、体重の測定、雄雌の確認を行い、個体識別のためのマイクロチップを体に入れて、保護された場所で放しています。この作業をするためにアニマルランドの職員の方は、文化財の現状変更許可を受けています。わたしも調査に参加させていただくときがあります。
さて、このオオサンショウウオ。研究者の間では、「四国にもともとすんでいる在来種」であるのか、「あるときに人が四国外から連れてきて、四国の川に放した国内移入種」であるか、判断が分かれている生きものなのです。その判断をするために、調査が進められています。これから3回に分けて、調査の結果、分かってきたことを紹介します。
横倉山自然の森博物館学芸員 谷地森秀二
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