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No.195博物館だより オオサンショウウオのお話(第二話)

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高知県越知町

四国で見つかるオオサンショウウオは「四国にもともとすんでいる在来種」であるのか、「あるときに人が四国外から連れてきて、四国の川に放した国内移入種」であるか、研究者の間で判断が分かれています。

■在来か移入かの論争
在来種と考えている方々(在来派と称します)、国内移入と考えている方々(移入派と称します)が、それぞれ考える理由をいくつか示します。

▽見つかっている範囲と状況
四国の多くの場所でオオサンショウウオは見つかっています。
在来派の意見:これだけ広い範囲で見つかっているのなら、もともと四国にいた動物でしょう。
移入派の意見:ほとんどの場所で一回しか見つかっていない。もともといるのなら、同じ場所で何度も見つかるはず。

▽自然繁殖未確認
幼生や卵が見つかっていません。(今は状況が違います。後述します)。
在来派の意見:四国ではまだ調査が十分に進んでいないので、見つかっていないだけ。
移入派の意見:見つかる個体は成体ばかり。もともといるのなら、繁殖していないとおかしい。

▽化石発見
愛媛県大洲市で1万5千年前の地層からオオサンショウウオの化石が見つかっています。
在来派の意見:化石が出ているのなら、もともといたのでしょう。
移入派の意見:化石が見つかった時代は、四国と本州は地続きであったころ。約1万年前に氷河期が終わって海水面が上昇し、本州と四国とが海で隔てられた。化石が一回しか見つかっていないのであれば、四国ではその後にオオサンショウウオは絶滅した。今いる個体は最近持ち込まれたオオサンショウウオでしょう。
四国のオオサンショウウオについては、このような論争が続いていました。そのため、2002年に高知県が発表したレッドリストでは、オオサンショウウオは「情報不足」とランクされました。さらなる調査を行う必要があると、判断されたのです。

■幼生個体が捕獲される
2004年2月に越知町で新しい情報が出ました。なんと、幼生が見つかったのです。当時、のいち動物公園がカニカゴを使った捕獲調査を越知町でしていたところ、体の外にエラが出ている子どもの特徴を持つ個体が捕獲されました。この発見が発表され、オオサンショウウオは四国内で自然繁殖している可能性が高まりました。在来派の人々は、この河川での詳細な調査を進めることを決めました。中でも、以前から高知県のオオサンショウウオの調査を進めてきていた高知市のわんぱーくこうちアニマルランドが特に力を入れて、継続した調査を始めました。
その後、高知県内の複数の河川で数回のオオサンショウウオ確認の情報がありましたが、いずれも大型の個体が発見された事例ばかりでした。

■本州の研究者による講演
2015年2月3日に、広島県でオオサンショウウオの調査活動をしている方をわんぱーくこうちアニマルランドがお呼びした講演会が開かれました。講演会は私も聴講させていただくことができました。内容は、広島県におけるオオサンショウウオの生息状況、地元にお住まいの方々と連携した保護活動などが紹介され、とても貴重なお話を聞くことができました。

■専門家と一緒の現地調査
講演会の後、講師の方から「四国でオオサンショウウオの幼生が見つかった川を見てみたい」とリクエストをいただきましたので、わんぱーくこうちアニマルランドの案内で越知町の川に出かけていくことになりました。このときには私も同行させていただき、幼生個体が捕獲された場所に行きました。「せっかくなので、上流も見てみましょう」となり、車で川沿いの道をさかのぼっていきました。
しばらく進んだのちに、講師の方が川を見ながら、「今の時期、広島では卵から孵ふ化かした幼生が巣穴から出てきて川を下り始めます。幼生たちは川床にたまった落ち葉の中に潜んで、水生昆虫や小さな生き物を食べて大きくなります。ほら、あんな場所です」と、流れが緩くなって落ち葉がたまった場所を指さしました。
「では、せっかくなので探ってみましょう」となり、同行したメンバーが胴長靴を履いて川に入り、たも網で川床の落ち葉をすくってみました。その結果…。
続きは、また次の回に。

横倉山自然の森博物館学芸員 谷地森秀二

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