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南部町のいきものたち(200)

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鳥取県南部町

■ホンモロコ
◇天ぷらで初めまして
2009年4月5日、立ち寄った緑水園でうどんを注文しました。するとワカサギのような小魚がエビと一緒に天ぷらで乗っていたので、お店の方に尋ねたところ、ホンモロコと教えて頂きました。これが私にとって、ホンモロコ初体験となったのです。クセがなく、口の中でほろりと身が溶けて、うどんと一緒に美味しく頂きました。素焼き、燻製、マリネ、唐揚げと調理の幅も広く、丸ごと食べられるので、ビタミンやミネラル分の栄養素も豊富です。このお魚、滋賀県の琵琶湖固有種で、本来は南部町の川にいない生き物ですが、これまで阿賀、境、諸木など町内各所の水路で見つかっています。このような生き物を「国内移入種」といいます。

◇固有種が全国に
休耕田活用にと、ホンモロコ養殖が2000年代に広がり、30以上の都府県で養殖事業が行われました。鳥取県では一時期50件以上の事業所や農家が育てていたようですが、現在では高齢化などにより半分ほどに縮小しているとのこと。どの種類の養殖も飼育も同じですが、重要な点は他から導入した生き物をいかに逸脱させないかです。ところが休耕田では仔魚や卵の流出防止は困難。結果、琵琶湖の長き歴史が刻まれているホンモロコが、今や全国各地の河川で確認され、同じモロコ類との競合や交雑も懸念されています。日本魚類学会が環境省にホンモロコを「産業管理外来生物」に指定すべきと意見を出しましたが、現在、絶滅危惧1.A類の扱いで混乱を招くとのことで、「生態系被害防止外来種リスト」には記載されていないのです

◇無秩序を防ぐわけ
山ひとつ違えば花も違う、川ひとつ挟めば虫も違う、魚も虫も植物も私たちが計り知れない多様さを、地域の個性として持っています。その個性を失うことは、地元の財産を失うことと同じです。それは将来的に人間の社会生活にも巡り巡って不都合な事案を産むことにもつながってきます。既に多くの日本の水辺は外来種等により大きなダメージを受けている状態ですが、不名誉な肩書きが付けられた野生生物が今より増えないよう、まずは身近な生き物たちにアンテナを向けていければと思います。

自然観察指導員 桐原真希

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