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南部町のいきものたち(213)

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鳥取県南部町

■タマミズキ
◇冬のループ橋
ずっと気になっていた樹木がありました。それは南部町から伯耆町に向かう時に通るループ橋から見える所に根を張っています。急斜面に10本は生えているでしょうか。冬、車窓からまるで赤い巨大なクリスマスツリーのように美しい三角錐の樹形が視界に入ります。すっかり葉が落ちた枝々に3ミリ程の小さな実が高密度に集まりとても目立つのです。名前を調べたくても、自生地の斜面には近付けず、葉や実を手に取ることも困難。なんとか望遠レンズで記録写真を撮りましたが、すぐには正体を掴めずでした。その後、ひょんなことからヒントを得て特徴を確認し、ようやく判明したのは数年後。「タマミズキのタマちゃんかー!」図鑑を見た時に思わずそう声が出ました。

◇日本海側北限福井県!
タマミズキは、モチノキ科の落葉広葉樹で暖地を好む植物です。西日本から東南アジアに分布しています。北限は福井県と静岡県とされていますが、近年の気候変動で生きられる場所を北に広げていくかもしれません。実は2018年1月号の「広報なんぶ」でもこのタマミズキが登場しています。主役はアオバトでしたが、彼らが実をついばみ糞を落とし、種子が運ばれるのです。

◇観光資源に
2022年発行の「レッドデータブックとっとり第3版」では、タマミズキが新規追加されました。現在、県内の確実な自生地は南部町と倉吉市の2か所のみ。鳥取県と兵庫県では準絶滅危惧扱いで、熊本県は絶滅危惧II類、福井県と鹿児島県では絶滅危惧I類と大事にすべき樹種になっています。南部町の個体群は皆伐により自生地が失われるリスクも拭えませんが、逆に観光資源としてループ橋そばに展望ポイントを作り、皆さんに関心を持って頂く方向も保全保護に結びつく可能性もあります。足元が険しく接近しにくい上に、草花のように持ち去れるような盗掘の心配も少ないので、環境教育と観光の素材としてタマミズキと付き合う方法もありかもしれません。ただし、赤い実のツリーを見られるのは晩秋から野鳥に実を食べられてしまうまで。景観を楽しめる賞味期限が短いのが難点ですね。

自然観察指導員 桐原真希

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