東京の美術大学で絵画を学んだ秦さんは、大学卒業後に歴史的な紙資料の修復を行う東京の企業に就職しました。古文書を中心に、資料の破れや汚れ等を修復する技術を磨きました。
2005年、南部町で修復工房HATA Studioを開設。古文書以外にも、掛軸や絵画、本、新聞紙など紙資料の修復を幅広く手掛けるようになります。主に博物館、図書館、公文書館など公共施設からの依頼が中心ですが、中には個人が所有する掛軸や襖絵等の修理依頼もあるといいます。資料の修復から保存まで専門で手掛ける「修復家」は全国でも数少ない存在です。
秦さんの「修復家」としての大きな転機は、東京時代に出会った詩人・中原中也の資料。生家が全焼した時に救出された、焼け焦げたり水に濡れたりした資料の修復に携わります。全国紙で取り上げられるなど注目され、現在も中原中也記念館と深い関りが続いています。
手掛ける資料は文化財から個人の形見など身近なものまで様々ですが、それらに共通するのは〝世界に一つしかない〞ということ。「持っている人の思いと一緒に引き受ける」と話す秦さんは、資料修復について「歴史の中に身を置けるダイナミックな仕事。自分を通過し、次の時代にバトンを繋ぐ役割を果たしていきたい」と語ります。今後は人材を育成し、修復家のバトンも繋ぎたいと考えています。
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