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南部町のいきものたち(206)

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鳥取県南部町

■ニホンイノシシ
◇やっと撮影成功!
「あー!イノシシ!イノシシ!」運転していた夫が、突然声を出し大急ぎで助手席に置いていた望遠レンズ付きのカメラを構えました。南部町に住んで今年は21年。これまでイノシシの足跡は何百枚と撮り、イノシシ料理も味わい、解体も見学し、鉄筋製の箱罠にかかった姿も見て、我が家の裏でも仔猪が一目散に走る後ろ姿を見送りと、なにかとご縁があったイノシシたち。しかし、野生の状態で普段暮らしの彼らの姿を撮影する機会は全く得られなかったのです。それが4月1日の夕方、出会いは唐突で一瞬でした。鎌倉山に向かう車道で成獣を発見。約70m先で採食中でしたが、夫が運転席の窓からレンズを伸ばした時、ふいに鼻先を上げてふんふんと嗅ぐしぐさを見せました。おそらく私たちの匂いが風上から風下へ流れたのでしょう。車を見つけるとビクッとこちらを凝視し、大慌てで薮へと消えていったのです。歩いている時に鉢合わせにならなくて良かったと、記録を残せた安堵感を覚えつつ野外活動のリスクも改めて感じさせられました。

◇豪雪は苦手?
イノシシは雪深い地域は苦手とされ、豪雪地帯には少ない傾向がありました。しかし近年東北地方にまで分布を北上させ、温暖化の影響が示唆されています。町民の方からお話を伺うと、南部町でイノシシが身近になったのは平成になってからで、昭和の頃は民家のそばに出てくることはあまりなかったという情報を聞きました。里に出没する個体が増えたのは全国でも同様で、人の暮らしの場と近過ぎるために農業被害をはじめとするトラブルが大きな課題となっています。

◇数と距離のバランス
絶滅危惧種も普通種も有害鳥獣も害虫も益虫も、人とよき形で付き合っていくには、その生物の生息数や生息密度、人の生活圏との距離をいかにバランスの良いものにしていくかが重要です。それは人類が農耕文化を始めた頃から数千年前より抱えている問題でもあります。縄文時代の貝塚からも出土している猪、人の生活を守るためにも、彼らとの折り合いをどのように模索していくか、より関心を持って向き合っていかねばと思います。

自然観察指導員 桐原真希

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