■ミヤマカワトンボ
◇涼しさ割り増し
2022年8月9日、夫と夏の生き物の取材と撮影をするために、車で町内を巡回しました。境地区から大木屋まで水辺環境を見て回り、帰り際に笹畑に寄ってみました。法勝寺川の上流部にあたる流れは、水底がよく見え、石の影にはタカハヤと思われる魚影もちらほらと動いています。これは水の中に入ったら冷たくて気持ちいいだろうなと川を見下ろしていたら茶色い翅(はね)のトンボがフワフワと飛んで、すぐに川面から出ている石の上にとまりました。清らかな流れと、そのそばでたたずむカワトンボ。その風景を見ただけで涼しさを感じ、足でも浸しに行きたいわと思っていたら、「ミヤマじゃないか?まだちゃんとした南部町の記録写真撮れてないぞ。」と夫はカメラを抱えて水際に降りて行きました。これは撮影の邪魔はしちゃいかんなと、道路から見守ることに。その時、モデルになってくれたミヤマカワトンボはオス。清涼感をたっぷり醸し出していました。
◇日本固有種
南部町には、カワトンボの仲間が5種類います。翅が黒いアオハダトンボとハグロトンボ、薄い茶色の翅のニホンカワトンボにアサヒナカワトンボ、そしてミヤマカワトンボがメンバーです。沖縄にいる2種類も含めてミヤマカワトンボは日本産カワトンボ類で最も大きく、アサヒナとミヤマは世界で日本だけで見られる固有種となっています。今のところ、ミヤマカワトンボはレッドデータブックではどこの都道府県にも載っていませんが、夏に当たり前に出会えるトンボであり続けて欲しいところです。
◇ステンドグラス
ミヤマカワトンボの翅は、太陽の光の当たり具合によって茶色い翅が透けて、とまっている石や葉っぱに映り込み、まるでステンドグラスのような美しさを見せてくれます。しかし、そのような写真が撮れるのもなかなかチャンスがありません。こまめに生息地に通って、日差しが上から差し込んでいる時間帯を狙い、縄張りになっている川の中の石のそばで待ち続ければ、いつか撮れるかもしれないと、体力があるうちに取材できればと思います。
自然観察指導員 桐原真希
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