■長沢鼎 Vol.10「日本人の気概」
1920年、米国ではアルコールの含まれる飲み物の製造、販売、輸送を禁止する「禁酒法」が施行されます。長沢もグレープジュースやブドウを果実のまま販売するなどして凌ぎますが、次第に経営は苦しくなり、追い打ちをかけたのが1929年に襲った世界恐慌でした。廃業を検討せざるを得ない状況となりますが、長沢は耐える道を選びます。この頃はワインの密造、密売が横行し、長沢のもとにも悪徳業者が密売の話を持ち掛けてきます。しかし、曲がったことが嫌いな長沢は業者の目の前でワイン樽を叩き割ったといいます。卑怯なことを卑しむ薩摩人としての精神が伺えるエピソードです。
2020年1月、米国在住の長沢の子孫から長沢が所有していた印鑑が送られてきました。サイン文化の米国に永住しながらも印鑑を所有していたのです。長沢が日本人としてのアイデンティティを持ち続けていたことを伺わせる貴重な資料になります。
参考文献:渡辺正清著
『評伝 長沢鼎 カリフォルニア・ワインに生きた薩摩の士』
薩摩藩英国留学生記念館スタッフ 松原佳南
■開館10周年記念特別企画展
「long long journey 旅はまだ、続いている。長沢鼎展」開催中
薩摩藩英国留学生記念館
【電話】35-1865
<この記事についてアンケートにご協力ください。>