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特集:光を当てる(1)

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鹿児島県 出水市

日本の国土の6割以上を占める『森林』。
水を蓄え、土砂崩れや地球温暖化を防ぎ、生態系を守る。
私たち人間が生きていく上で、必要不可欠なものです。
しかし先の大戦と、
戦後の復興で多くの木が伐採された結果、
日本の山から緑が無くなりました。
その後、昭和30年から40年代にかけて、
国をあげて行われた『拡大造林政策』。
もう一度山を復活させ、
育てた木が将来の日本の
更なる発展を支えてくれることを願い、
先人たちが一本一本苗木を植えました。
それから約50年以上が経過した今、
山には緑が戻りました。
しかし、先人の思いとは裏腹に、
大きく立派に成長した木の多くは、
山の中で光が当たることなく、
静かに眠っています。
このままでよいのでしょうか。
山と向き合うべき時が、
もう既に来ています。

■森が迎える歴史上初の危機
総面積の約6割を森林が占める出水市。森林は国有林と民有林に分けられ、民有林のうち約6割が、一本一本手で植えられた人工林です。歴史を辿ると、出水も戦後行われた『拡大造林政策』により多くの針葉樹(スギ・ヒノキ等)が植えられました。出水は戦前から苗木生産が盛んで、出水の造林に使われた多くの苗木は出水産でした。出水は苗木生産では“県下の雄”と言われており、その後時代の流れと共に植木生産へとつながっています。

◇出水市の森林状況

ひと昔前までは、食事・風呂などに薪を使うなど木は生活必需品であり、山に入ることはごく自然のことでした。
しかし、山のおかげで生活が成り立っていた時代は、電気・ガスの普及と共に終わりを告げ、木に頼らない時代が訪れました。
山に入る機会が極端に減り、山への関心が薄れていく私たち。
その結果、先人たちが植え、大切に育ててきた人工林は放置され、暗い森の一部と化してしまいました。
現在の森は、かつて行われた「木の使い過ぎ」による危機ではなく、「木を使わずに放置する」ことによる歴史上初の危機を迎えています。

#1.光が当たらない理由
北薩森林組合 代表理事組合長 藤岡芳昭さん
「山に入る機会が減ったことで、興味・関心が無くなり、山の情報が次の世代へ受け継がれていないケースが増えています。名義変更が済んでいないことで山主が誰なのかわからない、受け継いだ人も自分の山がどこなのかわからない。山は今、深刻な状況です。」と訴えるのは、北薩森林組合代表理事組合長の藤岡芳昭さん。藤岡さんは、「情報が途絶えてしまっている一方で、戦後植えられたスギ・ヒノキの多くは50年以上経過し、伐採の適齢期を迎えています。先人は、苗木を植えた後も下刈り・間伐など時間をかけて、大切に木を育ててきました。今ある大きな木は、決して放置されてきた訳ではありません。先人は将来のために、今を生きる私たちのために、伐る選択をしなかった。山には、歴代の山主の思いが込められているのです。」と話します。

◇山が抱える問題
山の情報が共有されていない+整備のための費用→→負担適齢期を迎えているが伐採が進まない

私たちの気持ちが山から離れていったのは、山へのマイナスなイメージが根付いてしまったこともひとつの要因だと言われています。「山主さんと話をしていてよく聞くのは“山は持っていてもしょうがない”“活用しようがない”など財産としての価値が低いことからくる諦めの声です。確かに山の奥まった場所は、伐採に相当の費用がかかってしまうので手がつけられないのは事実です。しかし、林道が近くを通っている場所などは、少ない費用で伐採することができ、利益を生む可能性は十分にあります。その利益で、再造林を行い次の世代へ山をつないでいく。これが理想とする山のサイクルです。それにはまず自分の山を知ることから。昔のように、山と向き合う人が増えてくれたら、木も先人たちもきっと喜んでくれるはずです。」

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