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自治体の皆さまへ

特集:光を当てる(2)

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鹿児島県 出水市

#2.森に光を当てる
伐る・植える・育てる。このサイクルで森は守られます。
しかし、そのサイクルの「育てる」に重点を置き、適齢期を迎えた木を、自分の代では“伐らない”と宣言している林業会社があります。伐れば売れる木を、なぜ伐らないのか。

■株式会社 WOOD LIFE
後迫信一郎 × 中尾雄基
仁禮愛 × 亀本翔平

◇200年先の森創り200年先の森創り
「祖父と父が50年以上続けてきた木の仕事で、自分の人生は成り立っています。そして多くの人に、木や森に触れる人生を提供したいというのが社名の由来です。」29歳で父親から会社を継いだ中尾雄基さんは、現在の社名に変え、林業を継承しながら事業転換を行いました。
「自分の代から環境保全型である自伐型林業を行っています。自伐型林業というのは、簡単にいうと森に負担をかけずに小規模で行う、環境保全を最優先に考えた林業です。」そこでひとつの疑問を問いかけてみました。“儲けることは考えていないのですか?”その答えを真っ直ぐな目で中尾さんが教えてくれました。「事業を営む上で、儲けるという考え方も必要です。しかし、儲けよりも大切なものが森にはあるんです。森には、森林の所有の有無に関係なく、地域の皆さん全員に有益な影響を及ぼす公益的機能(生物多様性・地球環境などの保全機能等)があります。この機能は、貨幣換算すると年間で数十兆円もの価値があると言われています。森の機能を高め、最大限発揮させることが、私たち林業従事者の使命です。利益を優先し、災害を引き起こす可能性を高めるような伐採をするなら、やらない方が社会のためになります。」最後に、自分の代で木を伐らない理由を聞いてみました。「良い森を未来に残したいからです。間伐はしますが、良い木は残します。間伐し、森の環境を良くすれば、残った木はまだ大きくなりますし、木の価値も上がっていきます。そうすればワクワクする森ができます。成長した木を伐るかどうかは、未来の人が決めればいいと思っています。私たちの夢は、整備した森が200年先も美しくあること。自分たちは確実にいないであろう200年先を意識して森を創る。それが株式会社WOODLIFEの理念です。」

#3.未来へ光を当てる
山主 連尺野一雄さん
「親に笑顔で報告できるよ。」
「私が小さい頃は、土間で火を焚き、食事を作っていた時代。木がなければ生活ができないから、枝や薪を採りに山へ行っていたよ。山菜もよく採りに行ってたな。山からの恵みで生活していたから、山はとても身近な存在だった。」切り株に座り、話始めた山主の連尺野一雄さんが、昔を振り返った後、山を相続した時のことを教えてくれた。「私が30歳の時に親が亡くなり、この山を相続したが、場所を知っている程度で、その後40年以上放置していたよ。私だけではないと思うが、山を相続しても、“銭かけて銭にならんことはせん”という考えだった。しかし、心のどこかで引っかかっていたのは確か。この荒れたままの状態で、子どもたちに渡していいものか。」相続してから42年が経った去年、中尾雄基さんから連絡があった。「山を整備させてもらえないかっていう相談だった。迷いはなかったね。」雑木が生い茂り、長い間暗く閉ざされていた連尺野さんの山に光が指した。「整備後の山を初めて見た時は、正直感動したよ。昔のような綺麗で明るい山に戻してくれて感謝している。子どもに良い森が引き継げると思うと、肩の荷がおりた。これで一安心。親に笑顔で報告できるよ、“孫に、綺麗な山引き継いできたぞ”ってね。」

■市の取り組み
◇市有林の整備
市有林のうち、約8割を占める人工林を令和5年度から林業会社に管理委託し、次世代へつなぐ森を創っています。なお、間伐された山は、『かごしまエコファンドプロジェクト』に登録・認証し、更なる地球温暖化防止を推進しています。

◇山主への意向調査
令和元年度から市が山主へ調査票を送り、今後の山の管理などの意向調査を行っています。市へ山の経営・管理を委託することもできますので、興味のある方は農林水産整備課へご相談ください。

◇補助事業の拡充
これまで間伐に限定していた市の補助対象を、今年度から間伐・下刈り・再造林・鳥獣害防止施設へ拡充。伐採後も安心して山づくりができるよう、山主負担額の軽減を図ります。

◇自伐型林業の推進
令和5年度、『鹿児島自伐型林業推進協議会』が市内に設立。自伐型林業を推進する団体の設立は県内初。同協議会と共同でチェンソーの研修会などを行い、環境保全を第一とする自伐型林業を推進しています。

◆光を当てるために私たちにできること
01.山の情報の共有
家族・親戚間でどこに、いくつ山を持っているのか、次の世代も交えて情報共有しましょう。情報が途切れてしまう前に、受け継ぐことが今の世代の役割です。

02.悩む前に相談
持っている山の場所がわからない、木は今伐った方がいいのか残すべきなのかなど山に関するお悩みがある方は、小さなことでも気軽にご相談ください。

出水には、あなたの山を一緒に創り育てるパートナー[林業会社]がたくさんいます。
パートナーを頼りましょう。
森づくりは二人三脚です。

問合せ:農林水産整備課
【電話】63-4134

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