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いにしへだより No.19

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鹿児島県南さつま市

【素麵(そうめん)】
◆河添(こせ)の素麺流し
万之瀬川の河添(河瀬/川彩)渓谷では、古くから渓谷の清らかな水を利用した素麺流し(そうめん流し)が行われていました。
その方法は、清らかな水が流れる岩盤の窪み(甌穴等)に素麺を浮かべて食べるというもので、河添渓谷の岩盤の窪みに入れた素麺をしゃがみながら食する昭和時代の人々の写真も残されています。
十九世紀に書かれたとされる加世田郷の地誌類『再撰帳一の二』には、川畑村の川彩(万之瀬川の河添渓谷)における人々の楽しみの一つとして「岩もる清水に素麪を浮へ」と記されています。

◆ダンマエビを用いた素麺つゆ
かつて加世田などこの辺りの地域において、素麺のつゆ作りに多用されていたのがダンマ(手長エビ/テナガエビ類)です。
ダンマは「ひぼかし」てから使用します。「ひぼかす」とは、囲炉裏などの火に当てて、炙り焼き乾かすという意味の方言です。
香ばしくひぼかしたダンマからは、旨味に優れた極上のダシが出て、素麺のつゆの味をより奥深く豊潤な味わいにしていました。
渓谷の清らかな水と岩盤の窪みを利用した素麺流しも、ダンマを用いた素麺のつゆも、ともに地域の豊かな自然環境の賜物、大自然に育まれた食文化であったと言えるでしょう。

○ダンマ(手長えび)入りの素麺つゆ
ひぼかしたダンマから出る極上ダシが効いた素麺のつゆ
[引用・主要参考文献等]
・上東克彦2014「いにしへを訪ねてNo.18 加世田七名勝」『市報南さつま』2014年4月号(総務企画部企画政策課広報統計係編) 南さつま市役所
・鹿兒島教育會編1906『鹿兒島方言集』 久永金光堂
・加世田市役所1965『市報かせだ』第62号 鹿児島県加世田市役所
・近藤津代志1994「食習II(伝統食・伝統職・農業・その他)」『加世田市の民俗』(下野敏見編)加世田市教育委員会
・嶋戸貞良1935『鹿児島方言辞典』
・玉利秀徳1986「第六編産業経済/第五章観光」『加世田市史』上巻(加世田市史編さん委員会編)加世田市
・橋口亘2017「鹿児島県南さつま市加世田郷土資料館蔵『再撰帳』掲載絵図に描かれた近世薩摩国河邊郡加世田郷」『南日本文化財研究』No.27 『南日本文化財研究』刊行会
・橋口亘2022「江戸時代の薩摩における素麺流し(そうめん流し)について-鹿児島の「素麺流し」(そうめん流し)の由来-」『南日本文化財研究』No.38 『南日本文化財研究』刊行会
・原田浩典1993「河川漁法と漁具・他」『加世田市の民具』(下野敏見編) 加世田市教育委員会
・松山賢太郎1986「第十四編 文化財・人物/第二章 一般文化財」『加世田市史』下巻(加世田市史編さん委員会編) 加世田市

(文章/生涯学習課 橋口亘)

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