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自治体の皆さまへ

故郷を想う

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鹿児島県南大隅町

佐多郷友会
会長:寶満昭弘(題字※本紙参照)
寄稿:前田秋丸

佐多郷友会会長:寶満昭弘
南大隅町の皆さん、いかがお過ごしでしょうか。佐多郷友会の寶満です。
もう数年も前になりますが、南大隅町の広報紙に、佐多郷友会の会員がさまざまなメッセージを投稿して、故郷『南大隅』を心の拠り所にしている心境を綴ってくれていました。
遠きに在りてというペンリレーです。
しかしながら、誰もが予想だにしえなかったコロナウイルス感染症が世界中にはびこり、世界中の人々が自粛生活を余儀なくされる続き、その影響を受けてペンリレーも中断しておりました。今日の科学、医学をもってしても、未だコロナウイルスの根絶には至っていませんが、それに対する忍耐生活も限界に近いところです。これまで当然のように幅広く、賑やかに人と人との様々な交流が行われてきた世の中が、制限自粛というやや窮屈な生活を強いられてきましたが、このような社会情勢であっても、故郷南大隅町を心の拠り所とする人は少なくありません。
私は郡小中学校を卒業後、南大隅町佐多分校に進学しましたが、私の1年後輩に尾波瀬の前田秋丸さんがいます。二人とも佐多分校を卒業してから警察官を拝命し、私は鹿児島県警、前田さんは京都府警で人生を刻みました。前田さんには、この程佐多郷友会に入会していただき、時々故郷のことを語り合っています。
二人の共通点は、やはり故郷南大隅を想う心です。
そこで今回は、前田秋丸さんの想いや近況を皆様方に紹介したいと思います。
以下の文章は、京都鹿児島県人会総務委員長、薩摩藩士の遺徳を偲ぶ大黒寺追慕会会長前田秋丸さんの寄稿です。

寄稿:前田秋丸
南大隅町の皆さん、南大隅町出身の皆さん、南大隅高校佐多分校卒業の前田秋丸です。
私は高校卒業後、京都府警察官を拝命し、伏見警察署長などを歴任後、退職後は京都市内に住んでいますが、故郷鹿児島に関わる役職も務めています。私が総務委員長を引き受けている『京都鹿児島県人会』は、発足から60周年を迎えました。会長は、京セラ名誉会長稲盛和夫さんの後を受けて、弟の稲盛豊美さんが就任されています。京都鹿児島県人会は、涙を拭きながら故郷を後にして、苦労して各地で活躍を続けられた皆さんの尽力の賜です。この会に心の拠り所を作り、ここまで発展させて下さった先輩方には感謝の気持ちしかありません。
最近まで存じなかった方が少なくないと承知しておりますが、京都には近代国家のため命を尽くした薩摩藩のお墓があり、地元では毎年5月第4日曜日に伏見区の大黒寺で、追慕会が開催されてきました。このいきさつを知れば、背筋が伸びます。
追悼されているのは、まず明治維新の引き金ともいわれる江戸末期文久2年4月23日発生の寺田屋事件の犠牲者です。現在の伏見区の寺田屋で、倒幕を目ざした急進派(尊王攘夷派)の薩摩藩士の有馬新七らが、同郷の慎重派(公武合体派)の武士と乱闘になり、有馬新七ら7人が斬り殺された事件です。当時の薩摩藩は慎重派で、非常に微妙な状況でしたが、有馬新七らは日本の将来のことを思い立ち上がろうとしたのです。今日の日本の発展の元となったかけがえのない犠牲者です。
その犠牲者を救護したのが伏見区の斎藤酒造です。斎藤酒造は、事件当時は呉服商であり、事件を聞きつけて犠牲者をサラシでくるむなどして救護し、亡骸を近くの大黒寺(通称薩摩寺)で弔いました。薩摩藩士が弔われた大黒寺は、斎藤家の菩提寺であったようです。
追悼されている方がもう一人います。皆さんよくご承知の薩摩藩家老平田靱負です。
木曽川、長良川、揖斐川の3大河川が合流する岐阜南部は、江戸時代、大雨のたびに洪水に襲われて多数の死者が出るなど、長年水害に悩まされ続けていました。幕府は、この3大河川の改修計画を作り、その工事を薩摩藩に命じ、その総指揮をとったのが薩摩藩家老平田靱負です。
宝歴4年1月工事費30万両、工夫1千余人を得て、水害から民を守るための大事業でありました。平田は、幾多の失敗を乗り超え何とか任務を全うしました。しかし、工事中に病気や水害に見舞われ、そのためのやり直し工事費がかさみ、藩に隠れて借金したことの責任を感じ自死したとされています。平田靱負は、岐阜から塩漬けにされ、大黒寺に運び込まれました。
大黒寺では、これら薩摩藩士の追悼を160年余り続けています。その理由は『縁があった』という言葉に尽きるようです。
正に人間力を感じます。
国のために命を燃やし尽くした薩摩藩士が、伏見で地元の方に弔われている事実を知った時に、私は大きな衝撃を受けました。そして薩摩にゆかりのある京都の人のことも決して忘れてはいけないと肝に命じています。
私は京都に住んでいますが、やはり故郷を想う心が薄まることは全くありません。

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