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たるみず歴史・文化散歩 第55回

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鹿児島県 垂水市

■鹿児島大学演習林と垂水
〇減少していく後継者
今年の夏、垂水小学校に隣接する古民家の大木やプール側に枝を延ばしたセンダンの大木を、専門事業者に依頼し、伐採してもらいました。山仕事に従事して50年余りのT氏と、息子さん二人で作業する様は、まるで大木が彼らの身体の一部のように、次々と思う方向に切り倒されていきました。
戦後植林された杉やヒノキが今伐採の時を迎えています。昔は林業が栄えていましたが、現在、山仕事の後継者は垂水市には数組しかいないといいます。

〇鹿児島大学演習林
鹿児島県が令和7年度に『かごしま林業大学校』を開校します。大野地区に隣接する鹿児島大学演習林(農学部附属高隈演習林)も、実習フィールドや教育プログラムを提供します。
鹿児島大学演習林は、明治42年に開山しました。事務所・宿舎は長らく高峠近くの椎木神にありましたが、昭和55年に県道71号線添いの堀切近くに移転し、現在に至っています。演習林は森林や林業に関する教育と研究の場であり、そのための森林の管理、経営が主な業務です。
鹿児島大学演習林の管轄する森林のうち、およそ半分は牛根地区にあります。牛根麓507町、二川923町、牛根境77町で、耕作面積の少ない牛根は昔、国有林の払い下げによって開墾し焼畑でヒエ、粟、ソバ等を栽培しました。雑木を切り出し、炭焼き牛根薪として船で鹿児島市内に運び販売しました。
また、垂水市の『木』に指定されている牛根マツは、姶良カルデラ壁に多く生育しています。ここは土壌が浅く、西陽をうけ他の植物は育ちづらいですが、乾燥に強いクロマツには適しました。腐敗に強く、建材、造船用材、杭木として需要が高かったといいます。『垂水市史料集(八)牛根編』によると、当時の演習林経営方針の中に「演習林経営の方針の如何が直ちに牛根村民の生活全般に影響があるので、この事に配慮するように」といった旨が特記されているといいます。

〇演習林と地域の繋がり
昭和30年代、大野原の朝夕定期バスには大きなリュックを背に、カニ歩きをしながら乗降する鹿児島大学の実習生をよく見かけました。今は、大野地区をメインに活動する『たかくま森人クラブ』という鹿児島大学の学生サークルがあり、集落の行事にも多く参加しています。
今も昔も、雄大な桜島や高隈山等、自然豊かな環境と共に生きてきた垂水市。鹿児島大学演習林は、地元の住民と深く関わりがあり、なくてはならない存在です。

▽参考資料
『垂水市史料集(八)牛根編』発行:垂水市教育委員会

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