◆No.3 垂水市GIGAスクール構想の今と未来を語る
▽鹿児島国際大学准教授 垂水市GIGA スクールアドバイザー
辻 慎一郎(しんいちろう)
・Profile
鹿児島国際大学福祉社会学部児童学科・准教授。鹿児島市教育委員会教育部長、姶良市立帖佐中学校長を経て、令和6年4月から現職。文部科学省学校DX戦略アドバイザーを務め、デジタル庁デジタル推進委員に就任。
▽垂水市教育委員会 教育長
坂元 裕人(ひろと)
・Profile
鹿児島県総合教育センター教職研修課長、鹿児島市立玉江小学校長を経て、平成29年4月から就任(現在3期目)。「GIGAスクールのまち垂水」を理念に掲げ、ICTを活用した授業及び学校業務の改善を推進し、全国の自治体から注目を浴びている。
■全国レベルの垂水GIGAスクール
▽坂元 本市は、本年度「『交流』と『発信』~『未来の垂水を語る』小中学生からの提案」のテーマの下、郷土愛や豊かな発想を育むICTの効果的活用が高く評価され、「全国ICT教育首長協議会会長賞」を受賞しました。また、ICTによる授業や学校業務の改善を評価され、「教育DX推進自治体表彰2024」も受賞したところです。子供たちもタブレット端末を使った学びに意欲的です。4年間の積み上げが実を結び、嬉しく思います。辻先生にはアドバイザーとして、本市の取組についてお話を伺えればと思います。
▽辻 受賞おめでとうございます。相当数の自治体の中で、一昨年度に続き2回目の表彰ということで、感銘を受けています。垂水市はGIGAを中心に据え、未来を見通した教育行政が、他と比べて随分先を進んでいるなと感じています。また、子供たちが、ICT活用を笑顔で楽しんでいるのが印象的です。国の教育振興基本計画に「ウェルビーイングの向上」(身体的・精神的・社会的に良い状態で持続的な幸福も含む)が示されましたが、垂水市は、子供たちの姿にあるように、ICTによる未来志向の教育がなされています。
■未来志向の教育環境への理解
▽坂元 私たちは、ICTのプラス面に注目し、精力的に先進的な事業を進めてきました。一方、健康面や心理的・社会的な側面から、学校でのモバイル端末使用を制限する国も見られますが、どう思われますか。
▽辻 これらの国は人口規模や教育制度が日本と大きく異なりますので、比較して論じるのは慎重になるべきだと思います。日本の先生方の指導力は、以前から諸外国に評価されています。GIGAスクール構想により、子供たちがタブレット端末を持つことで、資質・能力の育成とあわせて、ネット依存や視力低下といった問題に対する具体的な指導も可能となりました。学校でのタブレット端末はあくまでも文房具であり、スマートフォンとは異なります。
▽坂元 同感です。先生方は子供たちに、タブレット端末は学びの文房具であることを指導し、保護者の皆様にもお伝えしています。タブレット端末を使用する中で、一つひとつの問題をクリアしていくことが大切であると考えています。本市が発行する「広報たるみず」に令和4年4月号から連載している、「GIGAスクール通信」第1号では、保護者の皆様に『GIGAスクール構想の良き理解者であってほしい』、『家庭でタブレットに向かって熱心に取り組む姿を見た時は、子供の学習を褒める』、『タブレット端末を使用する際のルールやマナーを教える』、『子供と一緒に学ぶ、良い時を過ごしてほしい』という4点についてお願いしたところです。
▽辻 今言われた4点は、極めて重要です。保護者がGIGAスクールの良き理解者であり、子供がタブレット端末で熱心に学習していたら褒め、意欲を高めて欲しいものです。私もいろいろな自治体で、保護者の皆様が集まるPTA講演会にお招きいただくのですが、その時に一番驚くのは、「GIGAスクール構想」や「学校DX」ということを、多くの保護者が知らなかったり、目的を勘違いされている方が多いことです。タブレット端末等についての極端なマイナスのイメージや、家庭での声掛けをされてなかったりですね。私が思うに、今、学校に子供や孫がいる方の割合が減ってきており、学校で行っている良い取組が意外と皆様に伝わっていないということがあります。その点、垂水市は学校も努力されているし、「GIGAスクール通信」での周知や、いたるところにGIGA関連の掲示がなされていたりですとか、熱心に取り組んでいる姿を見ました。
それから、家庭で褒めることは自己肯定感を高めることにも繋がり、とても良いです。ルールや学びという点では、これまで、スマホ等を活用させない時代がありましたが、やはり、実際に使いながら学ばせることが大切だと私は思っています。
今、文部科学省が定める学習指導要領の中でも、学力の基盤として情報モラルも入っています。情報モラルは、もはや子供たちの学力をつけるための基本となる資質として、学校でも取り扱っていると思います。保護者の方が集う研修会等と連携し、このことを話題にしていただきまして、各家庭でタブレット端末を子どもと一緒に使い、語り合うなど伴走者としてかかわることで、子供も伸びていくのではないでしょうか。保護者の理解があることが、子供たちを社会総動員で育てることにつながっていくと思います。
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