公益財団法人慈愛会と垂水市の包括連携協定のもと、今村総合病院の医師等の皆様にご協力いただき、市民の皆様の健康増進及び子育て支援啓発を目的に、4か月に1回、皆様にお伝えしたい情報をコラム掲載いたします。
■中高生のスポーツ障害予防について
スポーツ活動が盛んな中学生、高校生では体力と競技レベルが向上するため、スポーツによる怪我や障害が多くなります。今回はスポーツ活動に伴う様々な障害の中で、3つのポイントについて解説します。
(1)適切な体重について
スポーツ競技によっては、体重の増減がパフォーマンスに影響する競技があります。ラグビーや柔道、相撲など体重を増加させなければならない競技、一方で体重が増えることを避けなければならない競技もあります。双方ともに過多になると様々な問題が起こります。特に女子中高生での過多な体重減少は昨今、問題視されています。ダイエットによる体脂肪の減少は女性ホルモンのバランスが崩れ、無月経や生理不順が起こりやすくなります。これは、妊娠しにくい身体になる恐れや、疲労骨折が起こる可能性が高まります。周りの方に相談しながら自分の適切な体重を知り、決して無理なダイエットをしないように心がけてください。
(2)下肢の痛みについて
怪我を伴わない下肢の痛みのほとんどは過度な運動による筋肉疲労や、使い方の偏りによる筋肉のアンバランスが原因となります。問題となりやすい筋肉は大腿部(膝から上)の前と後ろ、下腿(膝から下)の後ろの筋肉が硬くなり問題が起こります。特に中学生では、骨が成長段階にあり成長軟骨と呼ばれる部位では自分の筋肉に牽引されて軟骨周辺の炎症が起こり、痛みが発生すると考えられています。痛みを感じたら、早い段階で病院受診し適切な理学療法を受けることをお勧めします。
(3)上肢の痛みについて
上肢の障害は主に野球、テニスなどの競技に多くみられます。特に投球動作における肘関節では前腕(肘から下)が上腕(肘から上)に対して外に反る動きが起こります。この時に前腕と上腕の骨が肘関節の中で衝突したり、内側の靭帯損傷が起こり、関節が異常な方向に動いたりします。衝突を何回も繰り返す事で成長軟骨が損傷し、悪化すると軟骨が剥がれ肘関節内に浮遊してしまうことがあります。この状態は痛みも伴いますが、肘関節の動きが制限されることもあります。違和感や痛みがある場合は早めに整形外科を受診してください。無理のない適切な運動量で日々の練習を行いましょう。
◇最後に
スポーツの語源はラテン語の「deportare」(デポルターレ)という単語です。
デポルターレとは、「離れる、運搬する」を意味しており「日常から離れ、気分転換し、元気を取り戻すこと」で、勉強など日々の生活から離れ、気晴らしや遊び、楽しみを意味する言葉です。
スポーツの本質は、人生を楽しく、健康的に過ごす為のもので、勝利を追及するだけではなく、自分ペースで身体を動かしその競技を楽しむことです。ご自分の身体を見つめ直し、健康な状態でスポーツを楽しんで頂ければと思います。
今村総合病院
リハビリテーション部・スポーツ整形外科リハセンター
白尾 泰宏(やすひろ)
問合せ:保健課健康増進係
【電話】内線138
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