■スタッフ屋久島探究!~安房の苗畑と黐田(モチダ)~
現在の健康の森公園は屋久杉を伐採した後、植林をするための杉苗などを育てる畑があり、苗畑(なえはた)や苗圃(びょうほ)と呼ばれていました。苗畑の従業員は15名程で、ほぼ女性でした。一般的に杉は挿し木で増やしますが、屋久杉の挿し木は活着が悪かったため、種子を撒(ま)き増やしていました。
また、現在の健康の森公園近くにある弓道場はかつてトリモチ製造所があり、その付近は「モチダ」と呼ばれていました。トリモチとは樹皮から作られるガムのように粘着性のある物質のことで、屋久島ではヤマグルマの樹皮が使われています。樹皮を下図のような池に浸け4ヶ月程発酵させたものを水にさらして作られており、その池を黐田(モチダ)と呼んでいたことが地名の由来であると考えられます。硬水はトリモチの成分を悪くするため適さず、軟水である屋久島の水は製造に最適だったようです。下屋久営林署(現在の屋久島森林管理署)の資料によると、生産されたトリモチは島外に出荷され、鳥や昆虫を捕獲する他、薬品や絆創膏の粘着部分などに使われていました。1955(昭和30)年頃には建物は骨組みだけとなっていたそうで、事業が終了した正確な時期はわかっていません。
取材協力・担当:一覧については本紙をご参照ください
▽安房の黐田(現在の弓道場)
出典:農林省山林局編『國有林下巻』大日本山林会発行(昭和11年(1936年)12月20日発行)258頁
「黐製造」写真(下、ヤマグルマの皮を浸水池からとり出す様子
参考文献:
・屋久島春牧里めぐり里語り読本/春牧里めぐりの会編著
・柿木文庫やまぐるまの原木による「赤黐」の製造法
・屋久島町郷土誌第2巻村落誌中/屋久町郷土誌編さん委員会
・春牧区発足70周年記念誌/屋久島町春牧区
■第14回あなたが選ぶ写真屋久島口永良部島コンテスト
応募期間:5月1日(水)~5月31日(金)
応募要項は次号の町報をご覧ください♪
問合せ:屋久杉自然館
休館日:第1火曜日
【URL】http://www.yakusugi-museum.com
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