文字サイズ
自治体の皆さまへ

町誌編さん室の島のむんがたり

29/35

鹿児島県徳之島町

■車塔(クンマントウ)とナガタマチジョのこと
〽カラトンティ トゥリヤシ ドーヤ クシヌ ムラドー
―(塩辛にする)タコが獲りやすい所は 下久志村だ―
島唄「全島口説(ぜんとうくどぅ)き」に唄われた下久志集落から、横綱朝潮関生誕の地井之川集落が望める台地で、視界が開け遠くは加計呂麻の島々が見える所一帯が車塔である(写真1)。
藩政時代のこと、ナガタマチジョという絶世の美人が大和人(やまとぅんちゅ)と恋をした。その恋人が島を去る時、マチジョが後を追って駆けつけたが、船はもう帆を揚げて出た後で、消えゆく船の見えるこの岬に立って男の無常を恨み、近くの田行(たんぎょう)川の滝(写真2)に身を投じた。それ以来「車塔・田行川」近隣の道路に女の幽霊が出没し、髪をふり乱した怨霊が急に飛び出してきて夜間の通行人の後をつけるとか、車の行く手を阻むなどの怨念ぶりを見せると言い伝えられている。
友人のタクシー運転手が空車で車塔を走っていたら、前方で手を上げている妙齢の女性がいたので乗せてあげたら、途中で車内から消えていたという話を聞かせてくれた。それで運転手は気味悪がって、しばらく夜はその辺りを走らなかったそうだ。
数十年前の話だが、酒酔い気分に任せて風流を気取り、下久志集落から亀津までの月夜道を歩いたことがあった。車塔に近づくにつれ、これまで話に聞いていた伝説の数々が頭をよぎり始めた。ここを通ると首切り馬に出合うとか、タクシーの運転手の話等々。
多少酔っているとはいえ、思い出しても身の毛がよだつようなことが次々と頭に浮かび、大人気もなく大声で歌を歌って小走りに通り抜けるも、さすがに井之川集落までは後ろを振り向く勇気がなく、歩いて帰ったことを後悔したものだ。
今でこそ車塔一帯は道路事情も非常に良くなり、近くの店舗からの灯りがあり海に突出した辺りはきれいに整備され景勝地となった。往時の伝説を知る人や、周辺集落の人たちが所用で夜間に通りかかる時などどんな思いであっただろうか。気にかかるところである。
(町誌編さん室 岩下洋一)
※一部、時富彦氏著書を参考。
※各写真は本紙をご覧ください。

問合せ:郷土資料館
【電話】0997-82-2908

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU