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志布志市5中学校生徒会 いじめ撲滅ミニサミット報告(2)

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鹿児島県 志布志市

■8月28日に開催予定だった「いじめ撲滅サミット」では、森山小学校の冨吉省子校長の講演が予定されていました。講演は幻となりましたが、多くの方に届いてほしい内容でしたので、抜粋して掲載します。

「まっすぐにいこう」

森山小学校長 冨吉省子
市内の中学生のみなさんが、大きな社会問題となっている「いじめ」について、自分だけでなく、自分の学校だけでなく、「いじめ」をともに見つめ、考えていこうと、熱い志をもって準備を重ねていました。私は、その熱意に心を動かされた一人として参加させていただいたところです。
講演のタイトルは、私に人との接し方を教えてくれたきっかけの漫画に関連しています。この取組における、いじめに対する思いにも「純粋さ、まっすぐさ」を感じ、このタイトルとしました。
私は小学2年生の時、いじめを体験し、細かいところまではっきりと覚えています。ただ、今でも分からないのは、「なぜ自分がいじめられたのか」というきっかけです。
どうして無視されたのか。
どうして仲間に入れてもらえなかったのか。
当時は理由を聞くことさえできず、いじめが5年間続いたあのときの自分を、今大人になった自分がそこにいたら助けてあげたかったと思うのです。
当時、「グループづくり」が一番きつかったです。その度に自分が外されていることを再認識しました。学校に行きたくなくなり、ギリギリに登校すると椅子の上には無数の画鋲。私の登校前からいじめは始まっていました。体育服を田んぼに投げられたり、新調した歯ブラシをトイレに捨てられたり、スカートめくりが続くこともありました。当時が思い出されるため、今もスカートは1枚も持っていません。
「学校に行きたくない」気持ちでいっぱいの中、母に引きずられ、吐きながら登校する日々でした。
私は、いじめを体験した自分の使命だと思い、全ての体験をみんなで一緒に楽しむクラスを作りたい、そんな希望を抱いて教員の道を目指し、教職に就いて32年目になります。教える立場ですが、子どもたちから教わったことがありますので、一つ紹介します。
やんちゃな男の子、僚汰さんの話です。その当時、私は、「やんちゃな子どもたちが輝く場を」とドッジボールチームを作り、練習を重ねていました。その過程で互いに信頼関係を築き、九州大会まで連れて行ってもらいました。そのときの僚汰さんたちの嬉しそうな顔を私は一生忘れないと思います。
ある日、別の先生が「僚汰さんに親の財布から金を持ってこいと脅された児童がいる」と怒り心頭で話してきました。
「僚汰さんはそんなことしない」
そう伝えましたが、「確認しないわけにはいかない」と言われ、私が僚汰さんに話を聞くことにしました。
話したときの彼の気持ちを思うと心が痛く、信じ切ってやれなかった自分に腹が立ったことを思い出します。
「何?先生、俺、もう何も悪いことはしていないよ。」と笑いながら言う僚汰さんに、「分かってるよ。でも聞かないといけないことがある。」と言って、そのことについて尋ねたのでした。すると僚汰さんは「何の話?俺、そんなことしねぇし。先生分かってるでしょ。」僚汰さんは笑って、でも少し寂しそうにそう言いました。
結局、僚汰さんは全く知らないところで悪者にされたわけです。ゲームほしさに母親の財布からお金を抜き取って、とっさについてしまった5年生の男の子の嘘でした。私は信じてやれなかったことが申し訳なくて、「ごめん、僚汰さん」と謝るのが精一杯でした。
その後、両方の保護者を交えて話をする機会が設けられました。その場で僚汰さんは「先生、俺で良かった。他の人じゃなくて、俺で本当に良かった。」と言いました。これは、過ちを犯した人が、人を傷つけてしまったことに対し一番後悔する、心から罪を反省する言葉ではないかと思います。
いじめは人の人生を左右します。それは全て、決して良い方向には向かいません。いじめてしまった経験のある人も、いじめられた経験のある人も、これからの自分を、出会う人たちを、大切にしてほしいです。
生き物はみんな愛され、望まれて生まれてきます。病気や不慮の事故で生きたくても生きられない人がいる。そんな人たちに、力強く、「私は生きる。今を生きている」と堂々と言える行動をしてください。
笑顔あふれる、充実した学校生活を、皆さんがまっすぐに歩んでいけるよう心から祈っています。

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