徘徊(はいかい)とは「目的もなく、うろうろと歩き回ること」と定義されますが、最近はこの言葉を使いません。認知症の人の外出の多くはご本人なりの目的や理由があるとされ「独り歩き高齢者」などと新聞にも書かれています。
認知症やその疑いで2023年に行方不明になった人は全国で19,000人と過去最多になりました。95パーセントの人は生存した状態で見つかりましたが250人は現在も行方不明のままで550人は残念ながら死亡後に見つかっています。生存者のほとんどが3日間以下で発見されており、3日間が生存する可能性の限界と言われています。不幸な結末を避けるために市民の皆さまに次の3つの事をお願いします。
(1)心構え
軽度の認知症でも行方不明になります。行方不明者を発見した人の多くは探していた人ではなく偶然見つけた人です。様子がおかしいなと思ったら勇気を出して声掛けをしてください。「こんにちは。どこまでお出掛けですか?道は分かりますか?」の言葉が大事なきっかけとなります。先日も指宿市内で声掛けにより無事保護された事例がありました。
(2)事前の対策
認知症疑いの人が身近にいる場合は指宿市の「高齢者等あんしん登録票」への登録をお勧めします。名前・住所・特徴・写真・連絡先・かかりつけ医・よく行く場所などを事前に登録しておきます。現在、約200人の市民の皆さんが登録しています。
行方不明が起こると警察や消防に速やかにその情報が届き、防災行政無線で市民の皆さんにお知らせします。以前は事前登録した人にメールで捜査協力を要請してましたが現在は廃止されています。
月に数千円でGPS発信機を借りることもできますが発信機を付けた靴・かばん・シルバーカーを外出時に必ず使用してもらう工夫が必要です。普段の行動をご家族が注意深く観察しておくことも行き先を予測できる場合があります。
(3)身近な人が行方不明になったら
あわてずに近所の心当たりの場所を数カ所探し、見つからない場合は警察・地域包括支援センター・担当のケアマネジャーなどに連絡してください。自分たちだけで探すと3日間を超える可能性があります。
「独り歩き高齢者」はなぜか夕暮れ時に多いようです。
今月のドクター:指宿医師会 橋口 尚文(はしぐちたかふみ)
問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820
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