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「泉都(せんと)いぶすき」は大丈夫?~市民にとっての温泉の里~

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鹿児島県 指宿市

指宿は古い時代から温泉の恵みを受けてきた町です。戦後の経済成長の時代に観光地としての投資や開発が進み、多くの観光客が訪れるようになりました。今では国際観光保養都市とも呼ばれ、国内でも指折りの有名温泉地の一つとして仲間入りができました。
一方で、古くから湯治場(とうじば)として地域の方々に随分(ずいぶん)愛されてきました。二月田に「殿様湯」があるように江戸時代には島津のお殿様まで、湯治(とうじ)のために指宿まで足を運んでいただいていたようです。
全国から訪れる方々は「砂楽(さらく)」や「砂湯里(さゆり)」の砂むし温泉や「たまて箱温泉」などの露天風呂、そして市内のホテルや旅館などにある浴場を楽しみにして来られます。
一方で、市内各所にある多くの公衆浴場はもちろんの事、場所によっては家庭に引かれた「蛇口(じゃぐち)をひねれば出てくる温泉」は、指宿に住む人々にとって大切な資源であるとともに、なくてはならない財産でもあります。

■市民にとっての温泉
現在、市内には22ケ所の公衆浴場があります。その多くが区や集落などの地域で管理・運営をされ、一部には個人で経営する浴場もあります。もちろん市営温泉もあります。また、個人の家などに温泉を配る「配湯業(はいとうぎょう)」を運営している方々(企業を含む)は18事業所があり、市営でも配湯(はいとう)を行っています。
指宿に移住してくる方々や仕事の退職後にこの町で家や土地を求める方々の一番の目当ては、温かい気候とこの温泉にあると思われます。昨年、民間企業の調査によれば指宿市は住みたい・住みやすい町の県内上位にランクされたところです。
ところがこの数年、配湯(はいとう)の仕事を辞める方や浴場の経営存続が危ぶまれる事態が相次(あいつ)いでいます。市の資料では温泉配湯(はいとう)の戸数は10年前には、2700戸を超えていたようですが、現在は1800戸足らずにすぎません。
今後を心配する市民の皆さんの声がとても沢山(たくさん)届いております。もちろん私も全く同感です。事業断念の理由は、高齢、病気、跡継(あとつ)ぎがいない、補修やメンテナンスが困難、資金不足等々(などなど)、様々(さまざま)にあるようです。
この事態を深刻に受け止めて、すでに昨年から、事業を行っている方々に現在の状況や今後の方針など、できるだけ詳しく話を聞いてきました。その結果、将来、事業を断念する可能性のある方は少なくありませんでした。
もともと全国で見れば「温泉」という天然資源に恵まれない町が沢山(たくさん)あります。指宿で登録されている泉源の数は1050ケ所もあり、そのうち約6割は使われていない状態です。私達の町は「天からの贈り物」をいただいているのです。しかし、指宿はその財産を充分に活(い)かしきれていないと言わざるを得ません。

■温泉の里を守り続ける
今年の新年号で市の取り組む目標として様々(さまざま)な分野の将来を支える人を「見つける事」「育てる事」「支援する事」だと宣言しました。まさに温泉を事業として活用する方々の跡継(あとつ)ぎがいなくなってしまいそうなピンチです。今が大事な踏ん張り所です。
市役所でも支援の方法を様々(さまざま)に議論していますが、まずは〝我こそは”と手を挙げる方が必要です。指宿市内から個人でも会社でも名乗り出てくれることが一番です。もし、いない場合は全国から募集してでも事業を引き継いでもらえるように努力を続けたいと考えています。
現在、事業に取り組んでいただいている皆様も存続が難しいと考えていましたら、是非、声をかけて下さい。家業として引き継ぐ方がいない場合でも、その仕事に挑戦してみる後継者を一緒になって探してみませんか?
市内各地に点在する公衆浴場も同じ様に大切です。とりわけ冬場(ふゆば)には農作業などの後(あと)のお風呂を楽しみに暮らしている人が本当に沢山(たくさん)おります。市営でも砂むし温泉を含めて6ケ所はありますが、それぞれの地域の、昔ながらの浴場は是非守り続けたいものです。
温泉の町指宿は、訪れて良し。住んでみてさらに良し。そう感じられる地域を目指してゆきたいものです。

(指宿市長 打越 あかし)

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