文字サイズ
自治体の皆さまへ

ひおき歴史街道 No.29

8/28

鹿児島県日置市

■千本楠(せんぼんぐす) 県指定天然記念物へ
日置市教育委員会社会教育課文化係

吹上の大汝牟遅神社(おおなむち)(日置市吹上町中原)の参道東側には、「千本楠(せんぼんぐす)」(日置市指定天然記念物)の名で知られるクスノキの群生地があります。令和5年3月20日、鹿児島県文化財保護審議会は、この「千本楠」を鹿児島県指定文化財(記念物:天然記念物)とするよう答申しました。
クスノキは、クスノキ科クスノキ属の常緑高木で、関東南部以西の本州や四国、九州・沖縄に分布し、日本最大を誇る「蒲生のクス(大楠)」(姶良市・国指定特別天然記念物)をはじめ、樹齢を重ねるにつれて巨木化することで知られます。
「千本楠」の敷地には、樹高約22メートル、幹の直径約0.6〜2.5メートルのクスノキが約20本群生しており、この光景から「千本楠」と呼び親しまれています。このようにクスノキの巨樹が一カ所に集中して群生することは珍しいとされます。
明治43年(1910)の日英博覧会で、当時の農商務省が「千本楠」のクスノキを標本として出品した際、その切株を調べたところ樹齢800年以上とされたようです。また、大正から昭和初期の専売局や営林局(現在の森林管理局)は、樹齢200〜400年とも推定しています。
「千本楠」は、複数の太い横枝が地を這うように水平に伸びた姿も特徴的です。「シャボン玉」や「七つの子」などの作詞で知られる明治後期から昭和期の詩人野口雨情(うじょう)(1882〜1945)は、この光景を見て、「伊作八幡千本楠は横へ横へと寝てのびる」と詠んでいます。

◇「千本楠」
(日置市吹上町中原字楠園)
かつて、「千本楠」の敷地は、「楠屋敷」とも呼ばれていた。近代、その一部は国有林「楠園」とされ、大正5年(1916)には旧保護林制度により、名木保存学術考証のための保護林「千本楠」に設定され、準施業制限地および禁伐地となっていた。
戦後は、大汝牟遅神社所有地と林野庁所管地であったが、昭和40年(1965)に旧吹上町指定文化財(記念物:天然記念物)に指定され、平成17年(2005)には、合併に伴い日置市指定文化財(記念物:天然記念物)となっていた。

《参考図書・史料》
『日英博覧会事務局事務報告』上・下巻(旧農商務省)、本多静六氏編『大日本老樹名木誌』(大日本山林会)、『鹿児島案内』(鹿児島案内編纂事務所)、『国有保護林概観附・国有林内ノ名木及伝説木概観』(農商務省山林局)、『樟脳要覧』(鹿児島地方専売局)、『熊本営林局管内経営要録』(熊本営林局)、農林省山林局編『国有林』上巻(大日本山林会)、『ふきあげ10年のあゆみ』(旧吹上町)、『吹上郷土史』上・中・下巻・現代編・『吹上町の文化財と神話・伝説』・『吹上郷土誌』通史編1・3、資料編(旧吹上町教育委員会)、松江正彦氏・飯塚康雄氏「巨樹・老樹の保全対策事例集」『国土技術政策総合研究所資料』566(国土交通省国土技術政策総合研究所)、環境省自然環境局生物多様性センター「巨樹・巨木林データベース」HP

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU