■宇都心晴(うとこはる)さん
今年8月に鹿児島市で開催された「鹿児島県高校生ビブリオバトル大会」。
今回は、その大会で優勝した高校1年生の読書への思いに寄り添います。
※「ビブリオ」とは、ラテン語由来の言葉で、書物を意味します。ビブリオバトル大会とは、お気に入りの本を持ち寄り、その本の魅力などを紹介する書評合戦です。
◇本との出会い
「中学生の頃に見た映画の中で、主人公が本を読む場面を魅力的に感じたことがきっかけで、よく本を読むようになった」と話してくれたのは、今年創立60周年を迎えた学校法人川島学園れいめい高等学校に通う宇都心晴さん。宇都さんは、多いときには月に5冊の本を読み、少なくとも1冊は本を読むようにしているそうです。「幼いときに母がよく読み聞かせをしてくれたので、本を読むことに対する苦手意識はないです」と話します。
本が好きな理由を、「映像がないため自分で場面や風景を想像することができたり、主人公の気持ちになれたりするから、登場人物の人生をのぞき見できているみたいで楽しい」と笑顔で話してくれました。
◇本の甲子園への挑戦
中学生のときに全校生徒で取り組んだ校内のビブリオバトル大会で、紹介する人の人となりや、本の見方が分かるところに魅力を感じたといいます。高校生になり、先生の紹介で県高校生ビブリオバトル大会への参加を申し込んだそうです。「まず練習をする際には、本の魅力を紙に書き出して原稿を作ります。練習では、自分が話している姿を動画に撮って、声の抑揚や強弱、表情を確認して大会に挑んでいます」と話します。
県高校生ビブリオバトル大会には、29人が出場。予選会を突破した5人が決勝に進出し、見事優勝をつかみとりました。
宇都さんが紹介したのは、学校の図書館で出会った「世界でいちばん透きとおった物語」という本で、「今まで読んだ本の中で一番びっくりした本だった」と言います。本の帯には、「ネタバレ厳禁」と書いてあり、「紹介するときに何を言ってもネタバレになる。制限時間5分以内で、200ページ以上もある本の魅力を発表しないといけないところが難しかった」と言います。
発表中、聞いている人たちが興味を持ってくると体が前のめりになるそうで、その瞬間が一番楽しかったそうです。
県高校生ビブリオバトル大会後の校内発表で、宇都さんが紹介した本を読みたい生徒が増え、図書館だけでなく、学級文庫にも追加するほど影響力があったと先生が教えてくれました。
◇全国大会に向けて
令和7年1月26日に、東京で開催される「全国高校ビブリオバトル決勝大会」に県代表として出場する宇都さん。
「大会までの期間、他にもたくさんの本を読むと思います。ですが、もっとこの本を多くの人に読んでもらいたいので、全国大会でも『世界でいちばん透きとおった物語』を紹介したい」と言います。日々の部活動や勉強に取り組みながらも、多くの人に本の魅力を伝えるため、全国大会に向けて、練習に励みます。
■「人のとなりに」とは…
文字通り、その人の隣にいて、思いに寄り添うことや人柄を表す言葉「人となり」をイメージしたコーナーで、人物や活動の紹介だけでなく、その人の思いにスポットを当てることを目的としています。
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