■心に響く金の鈴
西 喜代子さん(74)
霧島出身。霧島公民館を拠点に活動。人とつながるのが好きで、近所に住む移住者からは第二の母と慕われている。霧島在住。
「霧島の子どもたちに霧島の文化を伝えよう」をコンセプトに、わらべ歌遊びや本の読み聞かせなどの活動を続けるのは、霧島地区のおはなしグループ・紙ふうせんです。
立ち上げメンバーの西喜代子さん(74)は設立当時、霧島図書室に勤務していました。「図書室の隣にあった幼稚園で、園になじめない子どものために、子どもが楽しく登園できるようにと縫い物が上手な保護者が、エプロンを舞台に見立てて人形劇を行う『エプロンシアター』を作って幼稚園に寄付しました。そんな社会貢献の仕方があると気付かされ、自分も何かできないかと考えました。思いついたのが、当時霧島地区にはなかったおはなしグループを立ち上げることでした」と西さんは振り返ります。
「活動をする上で最優先したのは、家庭を大事にすること。誰にでも家庭や仕事の都合があるので、無理せず楽しめるグループにしたかった」と話すとおり、その時に集まれるメンバーが参加し、読み聞かせだけでなく、それぞれが自分の特技を生かしてエプロンシアターやパネルシアターなどの作品作りに取り組みました。「中でも、ブラックライトを当てると絵が浮き上がって見える『ブラックシアター』は子どもたちに好評でしたが、題材とする絵本の著作権の問題で許可をもらえないこともあり、それならばと自分たちの手で紙芝居を作ることに。霧島にまつわる七つの伝説を題材にした『霧島の七不思議』は、私たちの代表作です」と笑顔を見せます。
さらに西さんの制作意欲に火を付けたのが、NHK大河ドラマ『西郷どん』に、霧島の開拓に貢献した偉人・桂久武が登場したこと。「地元の歴史に詳しい人や開拓従事者の子孫に取材するなど、メンバーと手分けして情報収集に力を入れました。あまり資料も残っていなかったので史実を後世に残せたらと、紙芝居だけでなく冊子も作りました」と胸を張ります。こうして作られた紙芝居『桂久武ものがたり』は昨年、県自作視聴覚教材コンクールで応募作品88点の中から最優秀賞を受賞。紙芝居部門の最優秀賞受賞は、同コンクール史上初の快挙です。
今年、女性の地位向上につながる活動などを顕彰するソロプチミスト日本財団から『ボランティア賞』も受賞した紙ふうせん。30年以上にわたり子どもたちと向き合ってきた西さんは「児童文学作家の椋鳩十さんの作品に『お母さんの声は金の鈴』という本があります。メディアが発達する昨今、愛情がこもった生の声を聴かせてあげることが大切。これからも子どもたちの心にワクワクやドキドキを届けられたら」と、今日もメンバーと共に金の鈴を響かせます。
「桂久武物語」
冊子・桂久武物語(全20ページ)は国分・隼人図書館、霧島図書室などに所蔵。
※紙芝居『桂久武ものがたり』の動画はこちら(本紙PDF版15ページ参照)
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