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【特集】霧島らしさ=霧島山?(2)

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鹿児島県霧島市

■霧島の四季を生み出す山
霧島山の持つ魅力とは何か。
霧島ジオパーク推進連絡協議会顧問で鹿児島大学准教授の井村隆介さんに話を聞きました。

霧島ジオパーク推進連絡協議会が今年、山の日にアンケート調査を実施しました。その中に「霧島のイメージは」という問いがあり、回答で多かったのは「温泉」や「自然」。皆さんはどのようなイメージを持っていますか。そのイメージは霧島山を通して見てみると、もっと奥深いものが見えてきます。

▽霧島山を通して見る霧島の魅力
市内には霧島山が生み出す温泉もありますが、妙見・安楽温泉のように霧島山を熱源としない温泉もあります。井村さんは「いろいろな泉質を味わおうと思えば県外の温泉に赴くこともできます。この地の温泉だからこそ持つ魅力は、四季の中で温泉を楽しめることだと私は考えています」と話します。
「県内の温泉どころ・指宿と比較してみましょう。指宿といえば砂蒸し温泉や海を眺めながら漬かれる温泉ですね。南国ムード漂う中でリラックスできるひとときを過ごせることでしょう。霧島ではそのような感覚を体験することはできないですが、指宿で秋に紅葉を愛でながら、冬は雪が降る中で温泉に入るイメージはできないのでは」
四季が明瞭なことは『食』にもつながっていると話す井村さん。「霧島は温暖な気候で栽培される野菜から、涼しい所で育つ果樹までさまざまな農産物を楽しむことができる。霧島でクリを食べようとは思っても、指宿で食べようとは思わないでしょ」と笑います。

▽四季を彩る植物の物語
ではなぜ明瞭な四季が生まれるのでしょうか。それは霧島山による標高差と南九州のこの位置が関係しています。
「霧島山の最高点は韓国岳の標高1700メートル。標高が100メートル高くなるごとに気温が0.6度下がるので、標高0メートルの海面からすると10.2度の気温差が生まれる。そのため植物のすみ分けが起こり、山麓から常緑の照葉樹、落葉広葉樹、針葉樹、山頂の低木といった植生が観察できます。でも、霧島山と同じ高さの山が北海道にあったとしても、ここまでの植物の多様性は生まれません。山頂部は冬が厳しすぎて裸地になってしまう。山頂まで植物が生きられる温暖な南九州のこの地に千メートル以上の標高を持つ山があるからこそなのです。秋は特に分かりやすい。山の麓は緑の常緑樹、標高を上げるにつれ紅葉していく落葉樹がある。こんなグラデーションが間近に見られる所は多くはない」と井村さんは力を込めます。
「霧島山は火山活動の繰り返しでできました。地球全体が現在よりも寒かった氷期には、寒い地域から暖かい所を求めて植物が南下。霧島山にはその氷期を経験した古い火山もあり、そこにはブナなどの本来寒冷地にしか育たない植物が見られます。これらの植物は氷期が終わった今も、標高が高いから生き残ることができた。桜島や開聞岳も千メートルくらいの標高がありますが、新しい火山なので、氷期の生き残りの植物はいない。一方、ミヤマキリシマは古い山ではなく、最近噴火した、あるいはその影響が大きかった荒地に見られます。霧島山の中でミヤマキリシマが楽しめる所は今後も噴火の影響を受ける可能性が高いということになりますね。大分の九重、熊本の阿蘇、長崎の雲仙でもミヤマキリシマを見ることができます。いずれも活動的な火山ということです。皆さんが何気なく見ている景色からは、とてもたくさんのことが読み取れるのです」

▽意外と知らない霧島山のこと
日本百名山や日本百景に選ばれている霧島山ですが、地図を見てもその名の山頂はありません。霧島山は、韓国岳や高千穂峰といった大小20以上の火山の総称です。
「霧島山が日本百名山の一つだと知っている人は多いと思いますが、明治時代には国語の教科書に載っていたことを知っていますか。戦前の日本人全員が天孫降臨の地として霧島山を学んでいた。すごいことだと思いませんか」と井村さんは目を輝かせます。「霧島山は、世界的な人気スパイ映画『007は二度死ぬ』(1967年公開)でもロケ地になりました。平成23年に大噴火した新燃岳がスペクターという敵の基地という設定。60年ほど前に、日本が世界に誇るべき景観として紹介されたのが霧島山なのです。皆さんが日々見ている霧島山の風景の中にたくさんの物語があるということに、興味を持ってもらいたいですね」

鹿児島大学准教授
井村 隆介さん(60)
大阪府出身。霧島ジオパーク推進連絡協議会顧問。学生時代から霧島山の地質を研究し、その姿を見続けてきた。姶良市在住。

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