哺乳綱齧歯(げっし)目リス亜目ヤマネ科
ヤマネ
国の天然記念物
(昭和50年6月26日指定)
■森の妖精・ヤマネ
皆さんは「ヤマネ」を知っていますか。ネズミの仲間のヤマネは、背中に黒茶色の線があり、リスに似たふさふさしたしっぽが特徴の、森にすむ小さな生き物。大人になっても頭からお尻まで約8センチ、しっぽの長さが約5センチ、体重は約18グラムとニワトリの卵よりも軽く、手のひらに収まるサイズです。
普段は木の上に一匹で暮らしていて、昼間は木の穴などに隠れ、夜になると出てきて昆虫や植物の実などを食べます。食べ物が無くなる冬は、木の穴の中などで丸まって冬眠をします。
くりっとした目の小さな姿はとても愛らしく、「森の妖精」と呼ばれています。
▽生きた化石
日本にすむヤマネは正式名称を「ニホンヤマネ」といい、日本の固有種で、国の天然記念物に指定されています。本州、四国、九州、隠岐に分布し、県内では大口国見山地、高隈山地、肝きも属つき山地、そして霧島山地にいることが確認されています。
ドイツの約5000万年前の地層で、ヤマネの祖先の化石が見つかっていて、日本が大陸と陸続きであった時代にヨーロッパからやってきて、少なくとも約510万年前には日本にいたことが分かっています。最も古くから日本にいる哺乳類の一つで、祖先から姿や生態があまり変わっていないため「生きた化石」とも呼ばれています。
日本に人類が登場したとされるのが約3万8千年前なので、私たちにとってヤマネは哺乳類の大先輩といえるでしょう。
▽準絶滅危惧種
木の上にすむ夜行性のヤマネは、もともと人の目に触れる機会が少ないのですが、近年は集材所などの木材から発見されることもしばしば。本来すんでいるはずの地域での発見が少ないことから、その数が減っているといわれ、準絶滅危惧種に指定されています。
すみかである森の木が切られ、ヤマネがすみやすい環境が減ってきている事と、森の中に道路が通り、ヤマネのすむ地域が分断され、狭い地域ごとに孤立してしまっている事が減少の原因ではないかと考えられています。
霧島山地は国指定鳥獣保護区・特別保護地区に指定され、鳥獣の捕獲や建物の設置、樹木の伐採などが規制されています。数が減っているヤマネの保護にもつながっている一方で、霧島山地は平成23年に新燃岳が噴火するなど火山活動が活発であることから、噴火の影響による環境の変化が心配されています。
▽安眠妨害にご注意を
自然界ではめったに会えないヤマネですが、時折鳥の巣箱や山小屋の布団の中で冬眠しているのを発見されることがあります。冬眠中のヤマネは体温を下げているため、死んでいると勘違いされて埋められてしまったり、助けようと体を温めると目覚めてしまい、春まで体力が持たなくなってしまったりするそうです。
ヤマネは天然記念物なので、捕まえたり飼ったりすることが禁止されています。もし冬眠中のヤマネを見かけても安眠妨害はせずに、そのままそっとしておいてくださいね。
(文責=堀之内)
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