◎能登半島地震から1年
令和6年1月1日、能登半島沖でマグニチュード7.6の地震が発生して1年がたちました。元日を襲った震災の被害を振り返り、私たちにできる備えを考えます。
私たちの暮らしの脅威となる地震。「いつ」「どこで」「どのくらいの」という三つの情報が地震には重要ですが、全てを正確に予測することは不可能です。私たちは能登半島地震で被害が深刻化した要因を考え、日頃の備えに生かさなければなりません。
■地震の被害にみる耐震化率
能登半島地震は死者・負傷者など1870人、一部破損を含む住家被害が14万9724件(令和6年12月26日現在)に及ぶ、甚大な被害をもたらしました。警察庁の集計によるとこの地震で最も多かった死因は、住宅の倒壊などによる圧死が約4割を占めます。「耐震化率の低さが、被害の深刻化につながった要因の一つだと考えます」と話すのは鹿児島大学准教授の小林励司さん(54)です。
本市の木造一戸建ての耐震化率は約71%ですが、被害の多かった石川県輪島市の耐震化率は約45%。「住み続ける年数や費用対効果を考えると、耐震工事をためらう気持ちも分かります。しかし、被害状況をみると耐震工事さえしていればと思わずにいられない」と表情を曇らせます。
■風景に潜む倒壊のリスク
地震が発生して避難所に向かうことを想定したとき、意外な所に危険が潜んでいます。「住宅の倒壊から逃げようと外に避難した際、これまで風景の一部だった建造物が牙をむくことがあります。老朽化した建物だけでなく、特に警戒しなければならないのがブロック塀や石塀です。過去の地震では、不安定な石塀の倒壊に子どもが巻き込まれて命を落とす事例もありました。想定する避難経路に倒壊しそうな物がないか確認してほしい」と小林さんは呼びかけます。
■霧島市で想定される地震
地震のタイプは大きく二つに分けられます。プレート同士の境界で起こる「海溝型地震」と、断層のずれで発生する「活断層型地震」で、能登半島地震は活断層型地震とされています。本市ではどのような地震が想定されるのでしょうか。
「霧島市は南海トラフ地震以外に、新燃岳など霧島山の火山活動に伴う火山性地震が起こる可能性があります。これは火山の中でマグマが動き、力のバランスが崩れることで発生する地震です。次に、活断層による地震。霧島市から垂水市にかけての沿岸部には、危険性の度合いが分かっていない断層(鹿児島湾東縁断層)が知られています(図1(本紙PDF版4ページ参照))。それとは別に『どこでも起こりうるマグニチュード6・9以下の直下型地震』も想定されます。この規模の地震は地表に断層が現れず、確認されている活断層以外の場所でも地震が発生する可能性があるためです。地震の規模次第では、津波や地殻変動が発生するかもしれません」
さまざまな地震が起こる可能性を知り、想定して備えることが大切だと訴える小林さんは「南海トラフを含む大地震が、今日起きても100年後に起きても私は驚きません。それほど地震の発生予測は難しい」と警鐘を鳴らします。
『いつか来る』が遠い未来ではないということを心に留めて、日々の備えに生かしましょう。
[INTERVIEW]
「地域での密なつながりが大切」
都市計画課 石井絢子(23)
被災地復興のために5月から7月の間、派遣職員として石川県志し賀か町まちへ支援に行きました。
被災者の話を聞いて大切だと感じたことは、地域でのつながりです。地震発生後は道路が寸断され、役場の職員が避難所開設に向かえない状況だったため、地区長らが自主的に避難所を開設。各班長へ避難者の人数把握や避難所内で不足している物がないかの確認などをしたそうです。自治会への加入をはじめ、普段から地域の人との関わりを持つことの重要性を感じました。
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